【学生の声2023】他大学からの進学:「海」の世界へ

2023年度「学生の声」
宮城 凜太郎(大気海洋科学講座 博士1年)

こんにちは。大気海洋科学講座 博士1年の宮城 凜太郎です。
本郷キャンパスの東塚研究室に所属しています。私は、千葉大学理学部物理学科から本専攻の修士課程に進学しました。「学生の声」は、私自身も進学先を考える際に参考になりましたので、地惑への進学を考えている方、特に他大学・他分野の学生さんの一助となりましたら幸いです。

1. 研究分野

1.1 学部時代

大学の卒業研究では、「水性二相分離系(高分子と塩を溶質とする混合溶液)」に対して鉛直方向に温度差を与えることで、2層流体中においてレイリー・べナール対流を再現し、そのダイナミクスを調べました。アクリル板を切断して矩形容器(数センチ)を自作するところから始め、組成や温度を細かく調整しながらカメラで記録する日々でした。容器からの液漏れには苦労しましたが、しっかり熱対流が見えたときはとても嬉しく、実験の醍醐味を感じられました。

1.2 修士課程

地惑の修士課程では、熱帯低気圧の通過に伴う海面水温低下について、海洋上層の塩分成層の影響とその経年変動を研究していました。パソコンでプログラムを書く日々で、研究手法は学部時代から大きく変わりましたが、データ解析を通して、実験室では決して見ることのできない大きなスケールの海洋現象を“見る”感覚はとても新鮮でした。

1.3 進路の決定

今の研究分野に進むことを決めたのは、大学3年の終わりでした。地球惑星科学に対する漠然とした興味は高校生の頃からありましたが、宇宙・地震・気象で迷っていて(←「海」は選択肢に入っていなかった)、イメージを膨らませるために、大学院入試ガイダンスに参加したり研究室を訪問したりしました。そのとき、ある研究室で「海」のロマンを熱く語る先生に出会い、海を研究しようと決めました。

皆さんは「海」と聞いて何を想像しますか?私の専門は、海洋学の中でも「海洋物理学」ですが、「何を研究しているの?」と聞かれ「海」と答えると、5回に2回は「深海生物?」と聞かれ、2回は「ふ〜ん」と返ってきます。そのたびに寂しい気持ちになりますが、無理もないかもしれません。空には雲や虹、雷など日常的に目にするものが多いですが、海の現象を実際に体験することはなかなかできません。「海にはまだまだ謎が多く、研究者も少ない」と知ったとき、他分野からの進学で不安もありましたが、それ以上に未開拓領域への好奇心が大きかったです。

具体的な研究テーマとして特に興味を持ったのが、台風に対する海の役割です。台風は、沖縄出身ということもあり幼い頃から馴染みがありました。研究室訪問を機に自分なりに調べてみると、台風の強度予測改善が長年の課題であることを知り、その解決の鍵は「海」にあるのではないかと考えました。台風の発達には海面からの熱の供給が重要な一方で、台風が海を通過すると海面水温が低下し、台風への熱の供給が弱まります。この台風通過に伴う海面水温低下が台風強度に与える影響は、まだ十分理解されていません。

台風の発達に対する海の役割を理解することで、台風強度を高精度で予測できるようになり、沖縄をはじめ強い台風が頻繁にやってくる地域において、台風による被害を抑えることに貢献できると考え、この道に進みました。最近、台風を研究している学生同士での勉強会も作られました。他大学とも定期的に情報交換することで、研究を進展させたいと考えています。

2. 院試

私が院試を受験したのはコロナ禍の1年目(2020年)で、皆さんとは受験のスタイルが異なるかもしれませんが、覚えている範囲でお話します。

2.1 筆記試験

専門科目は、私は数学1問・物理学3問を選択しました。難易度は、「学部1〜2年の基礎的な内容を理解していれば、少なくとも解法はわかる」レベルでした。計算量も適切でしたが、私はケアレスミスが多く得点は低かったと思います。専門科目のアドバイスとしては、「過去問を研究すること」です。数年分の過去問がホームページに載っています。実際に解かなくても、どのような問題がどのような頻度で出ているのか、そして、東大地惑で求められる力がわかります。

私が受験したときの具体的な内容はお話しませんが、受験を考えている方は、過去問の分析を強く推奨します。英語は、英作文でした。身近な話題について課題が与えられ、約200語で記述するものでした。制限時間は適切でしたが、久しぶりのライティングで少し戸惑いました。高い語彙力や特別な知識は必要なく、専門科目と同様、基礎的な学力が問われる出題でした。

2.2 口述試験

口述試験は「大気海洋科学」「地球惑星システム科学」の2つを受けました。結果的にどちらも合格をいただきましたが、手応えは大きく異なっていました。明確な基準はわかりませんが、自分のやりたいことをどれだけ具体的に伝えられるかに加えて、入学後は1つの研究室に数年間所属するので、相性も見られていたかもしれません。

口述試験の内容で特に印象的だったのは、私だけかもしれませんが、志望動機を英語で述べるように言われたことです。すぐ答えられたものの想定外で戸惑いました。英会話も研究を進める上では重要なので、読み・書きだけでなく聞いて話す訓練もしておくとよいでしょう。

3. 大学院での生活

最初の1年間は、授業やセミナーが中心でした。他分野からの進学で初めは不安でしたが、学部4年生向けの授業も履修できましたし、いろいろな授業を受けることで基礎的な内容を網羅できるカリキュラムでした。セミナーも様々なものがありました。教科書を研究室内で輪読したり、他研究室と合同で論文紹介や研究発表を行ったりすることで、視野も広がり、批判的に考える力や発表の仕方を学ぶことができました。そして、授業やセミナーに加え、学会や研究集会にも多く参加させていただきました。

海洋分野で大きなものとしては、JpGU(春)と日本海洋学会(秋)があります。私は研究対象が台風なので、日本気象学会にも参加しています。学会だけでなく、専門分野ごとの研究集会やワークショップ、勉強会もあります。研究者の方々が主催してくださるものもあれば、学生同士で企画された会もあり、有意義な2年間でした。博士課程では、ジャーナルへの投稿や国際学会への参加など、新しい挑戦も増えていくので引き続き楽しみです。

4. 最後に

入学するとわかりますが、大学院は大学までとはまったく違います。自分次第でいろいろな挑戦ができ、東大地惑ではそのための環境が用意されています。ぜひ進学を考えてみてください。

アラハビーチ
子どもの頃よく遊んだアラハビーチ(沖縄県北谷町)にて

宮城 凜太郎(大気海洋科学講座 東塚研 博士1年)
[2023.07公開/2023年度「学生の声」]

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