【学生の声2023】大学院入試と沖積層の研究

2023年度「学生の声」
池田 薫(地球惑星システム科学講座 修士1年)

はじめまして、地球惑星科学専攻修士1年の池田薫と申します。
私は、東京大学理学部地球惑星環境学科から本専攻に進学し、東京大学大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻須貝研究室に所属しています。ここでは、大学院入試の話や今行っている研究、進学後の生活についてご紹介しようと思います。

1. 大学院入試

筆記試験

地球惑星科学専攻の筆記試験は専門科目と英語からなります。

専門科目は、数学・物理学・化学・生物学・地球科学から2科目を選択します。希望する指導教員によっては科目の指定がありますが、そうでなければどの科目を選んでも問題ありません。専攻ホームページに過去問(5年分)が掲載されていますので、過去問を見て、取り組みやすそうな科目を選ぶと良いと思います。

私が筆記試験対策をはじめたのは、大学4年の春頃でした。まず過去問に目を通して出題傾向をざっくりと把握し、苦手な分野や忘れている分野を中心に復習をしました。過去問を実際に解いたのは7月頃だったと思います。英語はTOEFL-ITPだったので、市販の問題集で対策しました。

口述試験

昨年はオンライン形式で行われ、事前に提出した小論文に基づき、志望動機や大学院で行いたい研究とその手法などについて質問されました。口述試験の対策はとくにはしていませんでしたが、卒業研究で取り組んでいる内容や興味をもっている分野について、ある程度具体的に説明できるようにしておくと良いと思います。

2. 研究紹介

私の研究テーマは、関東平野中央部の沖積層形成と環境変遷です。

沖積層とは、最終氷期最盛期(Last Glacial Maximum ; LGM)[i] 以降に堆積した地層です。主に河川や海によって供給された泥・砂・礫から構成される未固結な堆積物であり、沖積低地を構成しています。関東平野は東京低地や荒川低地、中川低地をはじめとする沖積低地が広く分布しており、かつての荒川や中川の開析谷[ii] を沖積層が埋積しています。

約2万年前、LGMにおける関東平野の海水準は現在よりも100m以上低く、約7000年前にかけて現在の海水準+3m程度まで上昇しました。この間に海岸線は開析谷に沿って数十km内陸に移動したことが知られており、縄文海進と呼ばれています。海岸線はその後、河川等による土砂の供給によって開析谷を埋積しながら現在の位置まで移動し(海退)、海水準も現在の高さになりました。

海進海退の際に、開析谷中のある地点の環境はどのように変化するでしょうか。海進の際には海岸線が次第に近づくことになりますから、氾濫原からデルタ(三角州)へ、デルタから浅海底へと移り変わります。海退の際には逆に、浅海底からデルタへ、デルタから氾濫原へと移り変わります。

このような「ある地点における堆積環境変遷」は、ボーリングコア試料を用いて、堆積物の層相や粒度組成、元素組成、放射性炭素年代値等に基づいて復元されます。さらに、こうして得られた結果をデータベースや文献に記載された既存柱状図と対比することで、地層の累重過程や地形の形成過程が復元されます。

関東平野においては、沿岸部や主要な開析谷を中心に、沖積層形成過程や環境変遷が明らかにされています。しかし、大宮台地の谷底平野の沖積層については、未だ十分な検討が行われていません。そこで、卒業研究では元荒川下流部の沖積層について堆積環境の復元を行い、堆積環境変遷や縄文海進について検討しました。現在は綾瀬川の沖積層について堆積環境の復元を行っています。

元荒川 掘削地点
図1.元荒川におけるボーリングコア試料の掘削地点。写真奥が上流側。海から直線距離で約40km離れているが、標高-5m付近には貝殻片を含む海成層が分布する。

3. 院生生活

大学院は学部に比べて必要単位数がそれほど多くないので、週3コマ程度の人もいれば、修士1年の夏学期にできるだけ取ってしまう人もいます。

私は柏キャンパス所属ですが、地球惑星科学専攻の講義は基本的に本郷キャンパスで行われるため、週3ほど本郷キャンパスに通っています(もちろん、許可が下りれば他の研究科の講義も受講することが可能です)。

ゼミ・セミナーは、研究室ゼミや講座のセミナーなど、2~3程度参加することになると思います。合わせて週1~2回程度になるようです。

あとの時間は、各自の研究を進めます。研究室や研究手法にもよりますが、いつどれくらい研究に取り組むかは自分次第です。焦らず楽しく研究を続けられれば良いと思います。

4. 最後に

ここまで読んでいただきありがとうございました。
皆様の進路選択の参考になれば幸いです。

注釈

[i]  最終氷期最盛期(Last Glacial Maximum ; LGM)
最終氷期(約12万年前に始まり、約1万年前に終了した最も新しい氷期)の中で、氷床量が最大となった時期。約3万年前から2万年前。海水準は現在と比べて130m程度低下した。

[ⅱ] 開析谷
河川の侵食作用によって刻まれた谷。

池田 薫(地球惑星システム科学講座 須貝研 修士1年)
[2023.07公開/2023年度「学生の声」]

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