地球惑星物理学科

地球惑星物理学は、地球や惑星の上で生起する様々な現象を、物理的手法を用いて解明する学問分野です。
天気予報や緊急地震速報といった日常生活上のニーズを背景に、地球惑星物理学の対象は極めて多岐に渡っており、太陽系や惑星の進化、宇宙空間での現象までを含んでいます。近年では地球温暖化予想や深海探査、固体地球深部の探査、宇宙における生命発生の探求など、活躍の場は従来にもまして広がりつつあります。
人間活動のフロンティアを地球惑星物理学科でともに学びませんか?

学生の皆さんへ

日々の暮らしに影響する天気の変化、いつ起きるかわからない地震や火山噴火、それらを駆動している大気や海洋のダイナミックな変動と地球内部でのゆっくりとした動き、さらに夜空を彩るオーロラや、いまや銀河系の外でも見つかっている惑星の成り立ち。地球惑星物理学科では地球および惑星、そしてそこに起きる様々な現象を物理学的アプローチによって理解することを目指し、学生教育をしています。

自然の観察(観測)・実験を通じて物質や現象の特徴をとらえ、数学の体系を使って法則としていくのが物理学です。観察・実験と数学の組み合わせによって、物理学は過去数世紀に多大な成功を収めました。物質の最小単位は何か、宇宙の始まりはどうなっていたか、そういう究極の問題は今も物理学の最前線にあります。一方で複雑な自然の物質や自然現象の本質を解明するのも、簡単ではない問題です。そのような問題、特にわたしたちの生活する地球や惑星に関する様々な問題に取り組むのが、地球惑星物理学です。

地球や惑星についての勉強というと、高校地学を連想する人が多いでしょう。理系高校生で地学を履修する人は少なく、それはある意味妥当でもあります。浅い知識の習得を超えて、現実的自然の複雑さに取り組むには、物理や数学、化学や情報科学のしっかりした基礎が必要だからです。高校から教養学部での勉強を経て、その準備は整ったはずです。地球惑星物理学科では物理学を中心に、さらに広く深く学ぶことで、自然について体系的に物事を考えられる人を育てます。

当学科の扱う対象は、自然の中の様々な物質や現象です。研究者としてその摂理を解き明かすことこそ科学の醍醐味です。当学科のように物理学を基礎として地球や惑星についての科学を体系的に教育する学科は国際的にも珍しいため、卒業生は極めて高い研究能力を発揮し、国際的に重要な成果を上げています。卒業生全員が研究者になるわけでもありませんが、地球惑星物理学は社会においても役立ちます。自然災害や地球温暖化など、現実的問題解決へ貢献することはもちろん、在学中に身につける物理学的体系的な思考法こそが、不確実さが増す時代に充実した人生を送る支えとなるはずです。

元々地球や惑星に興味があった人、自然を対象にした物理学に興味ある人、社会的意義を求める人、そんな皆さんと一緒に自然の摂理にチャレンジしていきたいと思います。

カリキュラム

教養学部Aセメスター(第2学年)

教養学部第2学年専門科目では、物理学を学ぶ上で基礎となる科目に重点を置いて学習します。また、演習科目も重視されます。物理学や数学の基礎は、繰り 返して演習し身につけることが重要だからです。また、第3学年以降の専門科目を学ぶ上での導入講義が選択科目として開講されています。

第3学年

第3学年では、地球惑星物理学の基礎的な科目を学習します。地球惑星物理学は巨視的な物体を取り扱うことが多いため、巨視的な物体の物理学の基 礎となる科目です。この段階で学習する内容は地球への応用のみならず、日常的な応用範囲も非常に広いものです。3年時に学習する基礎的科目は、将来、地球 惑星物理学のどのような分野を目ざすにしろ、基礎として学修が推奨されています。

また第3学年では、実験(地球惑星物理学/化学実験)・計算機演習(地球惑星物理学演習)・観測実習(地球惑星物理学観測実習)が開講されます。地球惑星物理学では実際に地球や惑星を観測したり分析したりすることが重要ですが、そのための基礎的な実験技術の修得のために、地球惑星物理学実験と地球惑星化学実験とが開講されます。また、地球や惑星上での現象は規模が大きく、容易に実験ができないこともあるために、数値実験は古くから重要な技法となっていました。数値実験の基礎的な技術を学ぶために地球惑星物理学演習が第3学年で開講されます。また、地球惑星物理学では観測データがその進展を支えています。観測データを実際の現場で取得することで観測の意義を学ぶ観測実習も開講されます。

第4学年

第4学年では、第3学年までで身につけた物理学の考え方を基礎として、実際に地球や惑星上で生起する様々な現象とその原理について学習します。将来的にいろいろな専門分野に入っていく上での基礎となる講義です。地球惑星物理学科では、学部の段階では専門を絞り込まないため、地球や惑星上で生起する様々な現象の基礎を広く学ぶことができることも大きな特徴です。  

地球惑星物理学科には卒業論文や卒業研究はありませんが、それに代わるものとして、地球惑星物理学特別演習・地球惑星物理学特別研究が開講されます。第4 学年Sセメスターには地球惑星物理学特別演習が開講されます。ここでは論文の講読を中心として論理的なまとめ方、発表の仕方についての基礎的トレーニングが行われます。第4学年Aセメスターには地球惑星物理学特別研究が開講されます。ここでは1-2名程度の小グループに分かれ、それぞれ特定の興味あるテーマを選び、教員のアドバイスを受けながら主体的に問題を解決していく中で、地球惑星物理学における研究のプロセスを体験します。これらの科目のしめくくりとして、各学期の終りには、成果を発表する機会が設けられています。

駒場生へ

科目選択の手引き

地球惑星科学は、地球・惑星・太陽系の過去(起源/歴史)・現在・未来のすべてを解きあかそうとする学問なので、その性格上、広範な科学的知識 とそれを活用する能力が不可欠な分野です。  地球惑星物理学科に進学を志す諸君には、以下に示すように、数学、物理学、化学 の基礎を身につけておくことを期待しています。いずれの科目も講義とならび演習をしっかりやっておくことが大事です。教養学部で開講されているいくつかの 科目について、地球惑星物理学を学習するという視点から解説をしておきます。

1. 基礎科目

外国語

国際的に活躍するためには十分な英語能力が必要です。最新の研究成果は主に英文の科学雑誌に論文として掲載されますので、多くの場合、必要な読解・作文能力は研究活動を通して身につけることができます。一方、会話能力の向上には早期からの努力が肝心です。

基礎講義

地球惑星物理学において、数学は有力な『手段』を、物理学は『考え方』の基礎を提供します。進学には、数学・物理学の習熟が必須ですが、地球や惑星の諸現象の理解には構成物質を化学的に考察することが重要であることを特記しておきます。

基礎実験

地球惑星物理学において、実験・観測は数学とともに有力な『手段』の一つです。 実験機器の取り扱いに慣熟するとともに、測定原理をよく理解して実験を行う習慣を身に付けて下さい。原理の理解なくして優れた実験的研究を行うことはできません。

2. 総合科目

微分積分学続論、ベクトル解析

解析学の続きです。この部分の解析学は流体力学や電磁気学といった『場』を取り扱う物理学で必須の道具になります。地球惑星物理学でもいろいろな場面で現れますが、特に大気・海洋や宇宙空間の物理学の理解には必要になります。

常微分方程式

多くの自然現象が微分方程式という形で定式化されます。現象を表す微分方程式を作り、それを解くという行為は、数理的な自然現象理解の標準的な方法の一つです。 自然現象を記述する多くの微分方程式が常微分方程式に変形できることが多く、常微分方程式の理解は地球惑星物理学のすべての分野において理論を理解する上での基礎となります。

熱力学

熱力学は物質の状態とその変化を、圧力や温度など巨視的な量を用いて考察する学問体系です。地球や惑星の形成・進化は、熱と物質の移動と変化の 歴史であり、それを探求し理解するために熱力学は必要不可欠です。熱力学を通して学ぶ現象論的な手法は、複雑な対象を扱う地球科学全般において極めて有用 です。

振動・波動論

地球惑星科学の対象には様々な振動・波動現象が存在します。日々の天気を支配する高低気圧は大気中の波動であり、数年単位の気候に影響を与えるエルニーニョといった現象には海洋中の波動が重要な役割を果たしています。地震波を用いた地球内部構造探査などの応用的な研究も盛んで、地球惑星科学を学ぶ上で必須の学問分野であると言えます。

地球惑星物理学入門、惑星地球科学 I・II・ 実習、宇宙科学I・II

各人の興味に応じて履修することをお薦めします。特に、進学後のカリキュラムが講議中心となりますので、体験学習が可能な実習を履修すると良いでしょう。地球惑星に実際に触れることが極めて重要であることは強調するまでもありません。

進学に関して疑問・質問のある方は下記までお気軽にご連絡ください。

地球惑星物理学科 教務委員長 soudan-tibutsu[at]eps.s.u-tokyo.ac.jp

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