【学生の声2022】他学科からの進学と研究
2022年度「学生の声」
安東 梢(地球惑星システム科学講座 修士1年)
地球惑星科学専攻横山研究室修士1年の安東です。私は学部時代を東京大学理学部生物学科で過ごし、修士で地球惑星科学専攻に進学しました。
他専攻から本講座への進学を検討されている方への一つの参考となれるよう、私が本専攻への進学を決めた経緯と進学後の研究活動について書きます。
1. 進学の経緯
私は学部時代東京大学理科2類に入学し、進学選択で理学部生物学科に進学しました。
ただ、学部生の間に長期留学をしてみたいという思いがあったことと、生物学科で学べない分野に触れてみたいという思いから学部3年の終わりに東大の全額交換留学制度を使ってオーストラリア国立大学(ANU)に留学しました。ANUでは地球科学をはじめとした授業を複数受講したのですが、そこで同位体生態学の授業に強く惹かれました。生物学を学んでいると生き物の情報を調べるには遺伝情報を得るという発想になりがちなのですが(私だけかもしれませんが)、同位体比の分析によって生物の生態履歴が復元できるという内容は当時の私にとって新鮮で、とても面白いと感じました。
帰国後はこの分野で研究を進めたいと思い、研究室を探し始めました。しかし東大の理学系研究科でこのような研究を行っている研究室は多くありませんでした。調べていくうちに横山研は放射性炭素同位体(14C)を用いて幅広い研究を行っていると知り、ここであれば私の興味のある分野で研究ができそうだと感じ、進学先として志望しました。
2. 大学院での研究内容
大学院進学後の私の研究内容をご紹介します。私の研究テーマは、14Cを用いた硬骨魚類の炭素源の定量的評価です。魚の体組織の微量元素組成や同位体組成は、魚の生態履歴を保持することがよく知られており、それらの分析によって魚の生息していた海域や食性などの情報を得ることができます。特に炭素は生物の体を構成する主要な元素の一つであり、炭素同位体比を分析することで魚の生態履歴を復元する研究は数多くあります。
しかしながら、魚類体内の炭素の起源についてはあまり定量的に知られていません。つまり、自分たちが今分析している組織は生息海域の情報と食性の情報のどちらをどの程度保持しているのかが明らかになっていません。定性的な議論はあるものの、まだまだ未解明な点が多いです。
そこで私の研究では、魚の様々な組織に関して、感度の高いプロキシである14Cを測定することで、魚類の炭素源の定量的な評価を試みています。これによって、これまであまり議論がされてこなかった魚類の様々な体組織を構成する炭素源の理解に貢献できると考えています。
現在は耳石という平衡感覚を司る組織の分析をしていますが(図2)、これから骨や鱗などの他の硬組織や水晶体など、様々な組織に対しても同様に分析を行いたいと考えています。
3. 最後に
他分野から進学してきた人間として、専攻を変更するまでの経緯と現在行っている研究について紹介させていただきました。地球惑星科学専攻であるにもかかわらず私の現在の研究内容は生物を対象としたものとなっています。地球惑星科学という分野は非常に幅広く、興味を持っている人が多い一方でとっつきにくい印象を受けるかもしれません。しかし、幅広いゆえに自分のバックグラウンドを生かしつつ新しいことを学んでいくことができる分野でもあります。
自分の強みを生かしながら新たな分野に挑みたい皆さんの参考となれば幸いです。
安東 梢(地球惑星システム科学講座 横山研 修士1年)
[2023.03公開/2022年度「学生の声」]