過去20年にわたる全大気再解析データの作成に成功 ——宇宙の下端までカバーする世界初の大気再解析データ「JAWARA」を公開——

プレスリリース
佐藤 薫(地球惑星科学専攻 教授)

発表のポイント

  • 高度150kmをトップとする大気大循環モデルと高速なデータ同化手法を組み合わせたデータ同化システムを開発し、研究困難とされてきた中間圏・下部熱圏を含む全大気の長期にわたる再解析データの作成に成功しました。
  • これまで時間・空間的にまばらな衛星観測や限られた大気モデルに依存していた中間圏・下部熱圏研究を発展させるために、本研究は大気大循環や大気階層構造の定量的解明を可能とする20年にわたる長期再解析データを創出・公開しました。
  • 中間圏・下部熱圏の飛躍的な解明により、その下層に位置する成層圏顕著現象の発生メカニズムや、対流圏や地上気象とのつながりの理解が進むことが期待されます。これにより、季節予報の精度向上や、気候変動への適応力の強化に貢献する可能性があります。
JAWARA, 北極域の気温と赤道域東西風の19年間にわたる時間高度断面図
地上から高度110kmまでの全大気をカバーする世界初の再解析データJAWARA。
北極域の気温と赤道域東西風の19年間にわたる時間高度断面図。

発表概要

東京大学大学院理学系研究科の佐藤薫教授と、小新大特任研究員(研究当時 現:米国大気科学研究所に日本学術振興会海外特別研究員として滞在)、海洋研究開発機構の渡辺真吾上席研究員ほかによる研究グループは、地上から宇宙の下端にあたる高度110kmまでをカバーする全大気を対象とする長期再解析データの作成に成功しました。

この研究では、高度150kmをトップとする大気大循環モデルを基盤とした新たな高速データ同化システムを構築し、時間・空間的にまばらな衛星観測データを同化することで、地上から110kmまでの全大気の再解析データを作成しました。高度50~110kmに位置する中間圏・下部熱圏は、観測や大気モデル適用が難しく、「研究困難領域」とされてきましたが、このデータにより、大気全層にわたる大気大循環やその階層構造の詳細な解析が可能となりました。

さらに、この再解析データは、中間圏・下部熱圏を含む高度領域での大気現象を地上気象や成層圏と統合的に解析することを可能とし、大気科学と宇宙科学をつなぐ学際研究の進展に寄与します。特に、中間圏・下部熱圏領域での現象が成層圏や対流圏、地上気象に及ぼす影響を定量的に評価することで、季節予報のリードタイム延長や気候変動への対応力向上など、社会課題の解決への貢献が期待されます。

図1:1月の全大気の気温の緯度高度図(気温の単位はK)
地上から高度110kmが全大気。高度約10km以上を中層大気と呼ぶ。灰色の線は大まかな物質循環の構造を表す。

詳細については、以下をご参照ください。

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