海洋生態系鉄循環における動物プランクトンの役割 ―種別鉄安定同位体比が拓く海洋食物網の新たな描像―
プレスリリース
板井 啓明(地球惑星科学専攻 准教授)
高橋 嘉夫(地球惑星科学専攻 教授)
発表のポイント
- 動物プランクトン種別の鉄安定同位体比を世界で初めて計測
- プランクトンネットで採集される粒子全体とは異なる化学的情報を取得
- 外洋の生物生産性を支配する鉄について、食物連鎖を介した動態の理解を大きく前進
発表概要
北海道大学獣医学研究科の長谷川菜々子博士(東京大学大学院理学系研究科で博士号を取得)、東京大学大学院理学系研究科の板井啓明准教授、高橋嘉夫教授、同大学大気海洋研究所の栗栖美菜子講師、同大学大学院農学生命科学研究科の高橋一生教授、児玉武稔准教授らによる研究グループは、外洋における海洋生態系の鉄循環における動物プランクトンの役割について、鉄安定同位体比を用いて明らかにしました。
本研究では、先行研究で計測例が乏しかった動物プランクトンの鉄安定同位体比について、ダブルスパイク法を用いた微量安定同位体比分析法を応用し、プランクトン種別の鉄濃度と鉄安定同位体比を世界で初めて観測しました。先行研究では、プランクトンネットで採取されたバルク試料を用いて鉄動態が議論されてきましたが、本研究の結果から、種別に分離された動物プランクトンの鉄要求量はバルク試料より低く、さらに顕著に低い鉄安定同位体比を持つことが示されました(図1)。外洋の生物一次生産はしばしば鉄制限されることが指摘されてきましたが、今回の研究成果から、海水と魚類を結ぶ鉄の動態に関して、重要な道筋を得ることができました。

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