【学生の声2022】地球磁気圏の魅力と院生生活

2022年度「学生の声」
山川 智嗣(宇宙惑星科学講座 博士3年)

地球惑星科学専攻・宇宙惑星科学講座の関研究室に所属する博士課程3年の山川智嗣です。ここでは、私の研究分野である地球磁気圏の面白さや現在の研究内容、コロナ禍での院生生活について簡単に紹介したいと思います。本専攻への進学を考えている方の参考になれば幸いです。

院での研究について

研究対象

最初に私の研究対象である地球磁気圏について紹介したいと思います。地球には固有の北向きの双極子磁場が存在し、太陽風(太陽から吹き付ける高速ガス)との相互作用によって、図1のような地球磁気圏を形成します。夜側の磁気圏尾部領域(Magnetotail)では磁力線が引きのばされているのに対し、昼側では磁力線が圧縮された構造をとります。

地球の周りにある宇宙空間は真空ではなく、電荷を帯びた粒子(プラズマ)で満たされています。プラズマは、プラスの電荷を帯びたイオンとマイナスの電荷を帯びた電子の2種類に分けられ、これらの粒子は電磁場の影響を受けるので、大規模なプラズマの変動が地球磁気圏で起こることがあります。

図1:地球磁気圏の様子。(NASA Website)

研究紹介

私が特に興味を持っているのは、地球近傍の宇宙空間(内部磁気圏:地球から約7RE以内の宇宙空間)です。内部磁気圏は地球の双極子磁場が支配的な領域で、そこには幅広いエネルギー帯(eV~MeV)のプラズマが存在している大変面白い研究領域です。静穏時にはあまり変動は見られませんが、磁気嵐(地球磁気圏での大規模な擾乱現象)時には、内部磁気圏全体で大規模なプラズマ・電磁場の変動が見られます。

磁気嵐時になると、夜側の磁気圏尾部から地球方向にプラズマが輸送されます。内部磁気圏に入ってきたプラズマは磁場ドリフトによりイオンは西向きに電子は東向きにドリフトするので、内部磁気圏では西向きの環電流が形成されます。このとき、環電流は地球の固有磁場を減少させるだけでなく、ULF波動というmHz帯の電磁波動を励起させる場合があります。ULF波動は内部磁気圏で最もエネルギーの高い放射線帯電子(~ MeV)の供給にも影響を与える重要なプラズマ波動ですが、環電流によるULF波動の励起機構・励起条件はいまだに解明されていません。

そこで私は、環電流イオンの運動と電磁場の変動を自己無撞着に解くモデルを用いて、シミュレーションを行い、どこでどのようにしてULF波動が励起されるかを明らかにすることを目指しています。

図2:内部磁気圏の様子。(RBSP Website)

院生生活について

私はシミュレーション計算を用いた研究を行っております。そのため、普段の研究生活のほとんどはパソコンでの作業になります。具体的にはコード開発、解析のための図の作成やセミナーでの発表資料の作成とかになります。プラズマ系の研究室では、基本的にはコアタイムがないので、好きな時間に来て好きな時間に帰ることができます。

コロナ前は大体12時ぐらいに来て、19時頃に帰ることがほとんどでした。ただコロナ禍になってからは、セミナー・学会が全てオンラインになったので、あまり研究室に行く機会もなく、ひたすら家でパソコン作業をする毎日でした。2022年度からはセミナーが対面になったことで、多少は研究室に行く機会も増えましたが、それでもコロナ前に比べれば、研究室のメンバーとの交流の機会が減ってしまっているので残念です。

関研の学生は、コロナ前は海外の学会で研究発表する機会が多く、私もサンフランシスコでのAGUやサンタフェでのGEM Workshopに参加してきました。これらの学会では、自分と同分野の海外の研究者と交流することができ、非常に貴重で有意義な経験になりました。コロナ禍になってからは、学会自体もオンラインになり、なかなか海外に行く機会も減ってしまいましたが、2022年の6月にハワイでGEM Workshopが開催されるので、非常に楽しみです。

おわりに

大学院での経験をふまえて、研究紹介と院生生活について書いてみました。皆さんが大学院に進学される頃にはコロナが収まって、だいぶ元通りの生活に戻れるとは思いますが、この文章が皆さんの参考になれば幸いです。

山川 智嗣(宇宙惑星科学講座 関研究室 博士3年)
[2022.06公開/2022年度「学生の声」]

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