【学生の声2022】他大学からの大学院進学と研究

2022年度「学生の声」
副島 祥吾(固体地球科学講座 博士2年)

私は、海洋プレートが陸のプレートの下に沈み込む「沈み込み帯」の地下深くで形成された変成岩という岩石の変形構造解析をもとに、海洋プレートに運び込まれた水が沈み込み帯の中でどのように移動し、どのように地震や地殻変動と関わっているのか研究しています。私は、修士課程から地球惑星科学専攻固体地球科学講座に在籍しておりますが、学部は早稲田大学教育学部理学科地球科学専修に所属していました。本稿では、他大学や他専攻から本講座への進学を検討されている方への一つの参考となれるよう、私が本講座への進学を決めた経緯と進学までにやったこと、そして進学後の研究活動について書かせていただきます。

院進学について

進学の経緯

私は、学部生の頃から地震などのダイナミックな地殻の変動が起こると、岩石はどのように変形し、変動の歴史がどのように岩石に記録されるかについて興味を持っていました。そこで卒論では、岩石の変形と断層活動の関係の詳細に知るために、日本陸上最大の断層である中央構造線を研究対象としました。そこで特に注目したかったのが、岩石の微細組織と断層の過去の運動との関係でした。

学部3年の中頃から卒論遂行のための文献調査を行う中で、岩石組織から過去の地殻変動について多くの情報を見出すことが可能ということを知り、これを今後追求していきたいと考えました。同時に、近年の地震学において最も注目されている研究対象のひとつである、沈み込み帯の深さ30–40kmで起こるスロー地震という現象の理解のために岩石組織の定量的解析によって重要な貢献ができるのではないかと考え、地質学的手法を軸としてスロー地震の研究を行っている研究室を各大学のホームページや論文などから探しました。そうして、いくつかの候補を挙げた中から、現在私が所属する研究室を進学先として志望するに至りました。

進学までにやったこと

大学院進学を考えている皆さんにとって、特に大きな心配事のひとつはやはり院試対策でしょう。特に、外部からの進学希望者は内部の進学希望者よりも情報収集の面で不利なことが多いと思われます。そのため院試対策を効率的に進めるために、特に外部進学希望者はできるだけ早めに能動的に情報収集を開始することをおすすめします。

院試の体験談はインターネット上に数多く転がっていますが、それでもなおサンプル数は多いに越したことはないと思われるので、私が院試に向けてやったことを以下に時系列にして覚えている範囲で書かせていただきます。

学部3年8月頃…進学希望先を決定、院試についてインターネットで調べ始める。少しずつ入試のための勉強を開始。
学部3年3月…専攻の入試プレガイダンスに参加、志望研究室の教員とのコンタクトをとった。
学部4年4月…同じ地球惑星科学専攻を志望する、大学の友人たちと週1回の院試対策ゼミを開始し、本格的に試験の対策を始める。
学部4年5月…併願先の入試ガイダンスに参加。併願志望研究室への訪問。
学部4年6月…地球惑星科学専攻の入試ガイダンスに参加。志望研究室への訪問。併願先2校に出願書類を提出。
学部4年7月…地球惑星科学専攻に出願書類を提出。併願先1校目の入学試験を受験。
学部4年8月…併願先2校目の入学試験を受験。月末頃、地球惑星科学専攻の筆記試験を受験、1週間ほどして専攻ホームページ上で面接試験の対象者が開示され、その2~3日後に面接試験を受験。
学部4年9月…地球惑星科学専攻の合格発表。その後、元々志望していた研究室を含む3つの研究室をアドバイザーから提案され、研究室訪問の後、それらの中で最終的な志望順位を決定。
学部4年11月…大学院での指導教員が発表される。無事第一志望としていた研究室に配属されることとなった。

以上が、私の大学院進学までの流れでした。特に研究室訪問では、教員の方と直接大学院での研究について相談できるだけでなく、在学生とのつながりをつくることもでき、院試に関する正確で有益な情報とアドバイスや大学院生活の様子などについて沢山のお話を伺うことができました。そのため大学院受験を考えている皆さんには早めに研究室訪問を行っておくことをおすすめします。

また、ここには院試関連のことのみを書きましたが実際には卒業研究も平行して行っています。卒業研究も、進学後に研究を進める上で重要な経験となるため、おろそかにしてはならず、院試対策とバランスをとって計画的に進めることが大切です。

大学院での研究内容

最後に、大学院進学後の私の研究内容をご紹介します。私の研究テーマは、沈み込み帯での水の移動の定量化です。沈み込み帯において海洋プレートが沈み込む際、水は含水鉱物などとして地球内部へと運ばれます。含水鉱物が沈み込みに伴いある深度以上にもたらされると、脱水分解を起こし、水流体が沈み込み帯に放出されます。この水流体は沈み込み帯における様々な地質学的現象において重要な役割を担っていることがよく知られています。しかしながら、その移動や分布についてはあまり定量的には知られていません。

そこで私の研究では、前弧地殻下部(図1, d)に沈殿した石英の体積を変成岩の構造解析によって調べることで、その石英を沈殿させた沈み込み帯の「リターンフロー(図1, c)」を定量化して沈み込み帯水移動についての新たな制約を得ようとしています。リターンフローは沈み込み帯水移動の重要な要素である可能性があり、これを定量化することで、これまで不確実だった沈み込み帯のマントル領域(図1, a, b)の含水率の推定や地表と地球内部の間での全球的水循環の理解に大きく貢献できると考えています。

最後に

特に外部から本専攻への進学を考えている方にとって、本稿が参考のひとつになれば幸いです。外部受験は面倒な点も多いですが、得られるものはさらに多いと思います。特に、学部とは別の研究室に移るという経験は自身の研究に対する考え方の幅や視野を広げる大きなきっかけになるはずです。

また、地球惑星科学専攻には非常に多くのメンバーが在籍しており、様々な研究へのアプローチを身近で見ることができるため、思わぬところから自分の研究の問題解決のアイデアが得られたりもします。大学院進学を考えている皆さんがご自身にとって最善の進路選択をされて、充実した大学院生活を送られることを願っております。

副島 祥吾(固体地球科学講座 ウォリス研 博士2年)
[2022.06公開/2022年度「学生の声」]

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