【学生の声2019】アストロバイオロジーに魅せられて−他大学からのチャレンジ−

2019年度「学生の声」
末岡 優里(地球生命圏科学講座 修士1年)

「私たちは、一体どこから生まれたのだろうか。」
「この広い宇宙のどこかに、私たちの仲間はいるのだろうか。」
皆さんも、ふとこのような疑問を感じたことはありませんか?“地球外生命探査”と聞くと、SFの世界の話のように聞こえるかもしれません。しかし、今まさに現実の世界では、地球外生命の存在の証拠を求めて、生命探査の時代が訪れようとしています。

研究テーマ

私(写真1)は現在、地球生命圏科学講座の鈴木研究室に所属して、アストロバイオロジー(宇宙生物学)の研究をしています。アストロバイオロジーとは、生命の起源や、地球外生命の存在可能性など、誰もが一度は考えたことがあるであろう、私たちの存在の根本にある謎を解き明かそうとしている分野です。

著者:夏休みに神津島でトレッキングをして来ました!

具体的なアプローチとして、研究では、海底下深部の玄武岩コアを用いて、岩石内の微生物細胞を検出する実験を行っています。

地球と似た成因を持つ火星は、約30億年前に地表から水が消失しましたが、地下には氷層および液体状の水が存在していることが近年の研究でわかっています。
地球の海洋地殻は主に玄武岩で構成されていますが、火星も玄武岩から成っており、それぞれの地下深部の環境は類似していると言われています。海洋地殻深部の玄武岩内の生命圏を調査して得られた結果は、火星での生命探査に有益な情報となることが期待できます。
また、惑星保護の観点もとても重要であり、火星などの生命の存在可能性が高い他惑星から地球へサンプルを持ち帰る際に、どのような処理を施すべきかを議論するための実験も行っていこうとしています。それぞれの惑星の生態系を脅かさないよう、安全に留意しつつ、科学分析にも影響が少ない効果的な手法を開発したいと考えています。

私は、学部生時代は鹿児島大学で過ごしました。このページを読んでくださっている皆さんの中にも、他大学から東大院への進学を考えて一生懸命情報収集している方も多いかと思います(実のところ、私もこの「学生の声」はすごく参考にしていました)。そこで、今回は、外部から大学院試験を受けた身として、私の体験談をお話したいと思います。

地球惑星科学専攻へ入学するまでの道のり

学部生時代

高校時代、宇宙の中になぜ私たち生命が存在しているのだろう。どこから来たのだろう。という、小さな頃から漠然と抱いていた疑問に答え得る宇宙と生物学を融合したアストロバイオロジーという分野に出会い、将来は研究に携わってみたいと思っていたのですが、比較的新しい分野だったこともあり、まだ体系化されておらず、アストロバイオロジーを学べる大学を調べてもなかなか答えは見つかりませんでした。

でも、逆に言えば、何をやってもどこかでつながるということでもあったため、まずは幅広く勉強してみようと思い、生態系などを含めた地学全般が学べる鹿児島大学の地球環境科学科に進学しました。鹿児島県には、フィールドワークにはうってつけの様々な特徴を持つ島々や宇宙センターがあったことも選んだ理由の一つでした。
大学で過ごしながら、アストロバイオロジーへのアプローチ方法を考えているうちに、深海熱水噴出孔などに生息する、チューブワームなどの化学合成生態系に興味を持つようになりました。

院試説明会・研究室訪問

大学院への進学を考えて、ネットを中心にアストロバイオロジーに関われそうな研究室の情報収集をしていたところ、東大の地惑専攻に行き着きました。そこで、3年生の6月に初めて院試説明会に参加しました。

地球生命圏科学講座で、海底熱水噴出孔や地殻深部に生息する極限環境微生物について研究を行っている鈴木研究室の説明を聞いて、やっと出会えた!と感じ、その年の12月に再度研究室訪問をしました。先生の研究について詳しく教えていただいたことで、さらにこの場所で挑戦してみたくなり、受験を決めました。

入試対策

地惑専攻は、多様なバックグラウンドを持つ学生を受け入れる懐の広さも、魅力の一つだと思います。私は、受験科目として生物と化学を選択し、専攻のHPに載っている5年分の過去問を集中的に解いて準備をしました。
東大の学部生の授業でどんなことが教えられているのかなどの情報が手に入らない中での準備だったこともあり、教科書やネットをたよりに答えを導くまで苦労することもありました。

英語は、TOEFL-ITPを受けましたが、時間との勝負なので、参考書を用意して繰り返し練習をしました。文法のセクションは特に意識して、文法書を片手に勉強しました。
小論文については、テーマを相談して添削を重ねながら準備しました。当日はかなり緊張していて、自分にとっては、一世一代の大勝負のつもりで挑みましたが(笑)、晴れて合格することができて一安心しました。

皆さんも、バイトやサークル、定期テストなどの日々の生活と、試験勉強の両立が大変な時があると思いますが、きっと乗り越えられると思います。是非、あきらめず取り組んでもらいたいなと思います。

大学院での日々

普段の生活では、研究活動の他に、セミナーと授業に出席しています。研究では、電子顕微鏡やX線回折分析などの固体分析手法に加え、微生物の培養実験、DNA染色をした細胞の蛍光顕微鏡観察、DNA解析などといった生物学的な手法を用いて、主に岩石と微生物の相互関係に着目して実験を行っています。また、実験の成果をまとめる論文の執筆にも関わらせてもらっており、科学論文を自分で書くための力をつける訓練もしています。セミナーでは、毎週発表者の方々の研究成果を学びます。

(プレスリリースより:岩石内から検出した微生物画像)

地球生命圏科学講座は、古生物学的な分野から実験化学の分野まで、それぞれの研究室で多様な研究が成されているため、発表者の方々のお話は毎回新鮮で、新しい視点を与えてもらえます。
授業では、様々な分野の最先端で活躍している先生方から、幅広く興味深い研究について学ぶことができます。大学院での毎日は、日々新しい刺激に出会えて楽しいです。セミナーや講座で学期ごとに開催されるパーティーも息抜きになっています。

地球惑星科学専攻に入って良かったこと

地惑専攻には、多岐にわたる研究テーマを持つ先生方が大勢在籍しており、開講されているセミナーが多く、自分の興味に沿って多くのことを学ぶことができるところも魅力です。
また、様々なプロジェクトに携わる学内外の研究者の方々の講演会なども頻繁に開催されており、自分が普段あまり触れないような分野の研究についてのお話を聞くこともできます。私は、昼休みにコーヒーとお菓子を片手に、先生方のお話を聞くことができるランチセミナーによく参加しています。
東大は、日々たくさんの情報が行き交っているため、積極的に動くことが出来れば、自分次第で、多くのことを吸収して成長できる刺激的な場所だと感じています。

地惑専攻は、学部時代の専門にかかわらず、多くの人に門戸が開かれています。これまでに経験したことのない分野への新たな挑戦も受け入れてもらえることは大きな魅力だと思います。また、専攻で出会う人々は、多様なバックグラウンドを持っていて、話をしてみると、それぞれの個性が感じられてとても面白いです。
地球生命圏科学講座では、学生のメンバーはもちろん、先生も温かく接してくださっており、他大学から来た私も、和気あいあいとした雰囲気の中、安心して過ごすことができています。

これから挑戦したいこと

地惑専攻に来てからの経験はまだまだ浅いのですが、これからは出来る限り今の環境を生かして、自分の講座だけではなく、他分野のことももっと貪欲に吸収し、広い視野を持って総合的に状況を判断できるようになっていきたいと考えています。また、海外での活動やフィールドワークに積極的に取り組み、世界中の人とつながって国際的に活動してみたいです。

大学院進学を考えている皆さんへ

ここまで、私の体験談にお付き合いいただき、ありがとうございました。私は大学院に進学して、特に、環境の大切さを強く感じました。

研究は人と人とのつながりの中で行うものなので、研究室の方針はもちろん、先生方とフィーリングが合うかどうかなど、感覚的な面もとても大事な要素だと思います。
大学院への進学を考えている方には、まずは気になる大学の院試説明会に行ってみることをおすすめします。実際に足を運ぶことで、専攻の雰囲気などを含め、ネットだけでは得られなかった情報を知ることができます。また、先生方のお話を聞いてみることで、自分が本当にやってみたいことなどが見えてくることもあると思います。そして、自分が興味のある研究をしている先生を見つけたら、是非、連絡を取って、一度研究室を訪問してみてください。他大学の学生だったとしても、きっと先生方は快く迎え入れてくれると思います。
また、そこで院生の先輩とも話してみて、日々どんな研究に取り組んで、どんな生活を送っているのか質問してみるのも良いと思います。自分がそこで生活するイメージをしてワクワクする気持ちもモチベーションになります。
たくさん考えたら、後は思い切って飛び込むのみです!皆さんも、楽しく有意義な研究ライフが送れますように!

いつかどこかで、一緒に研究をする日が来たときは、どうぞよろしくお願いします:)

末岡 優里(地球生命圏科学講座 修士1年)
[ 2020.03公開/2019年度「学生の声」]

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