地球マントル深部での水の大循環が明らかに コア–マントル境界域の化学的不均質の原因解明へ
共同プレスリリース
堤 裕太郎(地球惑星科学専攻 博士課程)
廣瀬 敬(地球惑星科学専攻 教授)
発表のポイント
- 世界で初めて、地球のコア–マントル境界(CMB)領域に相当する環境下で、沈み込む海洋プレート(スラブ)中の水の挙動を調べました。
- CMB領域まで水を輸送するSiO2相は、超高圧高温条件下でも脱水せず、水を保持したままマントル浅部へリサイクルすることを明らかにしました。
- CMB領域の地震波観測が示す大きな化学的不均質は、水によって作られたものではないことが判明し、代わりに地球誕生時のマグマオーシャンに起因する可能性が高いと示唆されました。
発表概要
東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻の堤裕太郎大学院生と廣瀬敬教授を中心とした研究グループは、北海道大学の同位体顕微鏡を利用して、地球のコア–マントル境界(CMB)領域に相当する超高圧高温条件下で合成されたSiO2相中の含水量を測定しました。
下部マントルまで沈み込んだスラブは、SiO2相を水の主要なキャリアとし、マントルの底まで水を運びます。すると、コア直上の高い温度により、スラブはほぼ完全に脱水するとこれまで考えられてきました。その水は、マントルの底の岩石を融解させたり、コアの金属と化学反応して鉄酸化物を形成するなどして、CMB領域で観測される地震波速度異常を引き起こしていると考えられていました。
そこで今回、北海道大学の同位体顕微鏡を利用して、超高圧高温条件下で合成されたSiO2相中の含水量を測定したところ、CMB領域でも脱水は起きず、SiO2相を含むスラブ物質は水を保持したまま地球表層へ向かってリサイクルしていくことが明らかになりました。地震波観測からCMB領域には大きな速度異常が観測されており、これは化学的不均質によるものだとされています。本研究の結果から、この化学的不均質は水により引き起こされたものではなく、地球誕生時のマグマオーシャンに起因する可能性が高いと考えられます。
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