地球の水素と炭素はほとんどがコアに ー地球全体の存在量から水と炭素の由来を推定ー
プレスリリース
廣瀬 敬 教授、横尾 舜平 助教、堤 裕太郎 大学院生(研究当時)
発表のポイント
- 今回の高圧高温実験により、地球形成時にコアへどれだけの水素と炭素が取り込まれたかが明らかになりました。
- その結果、地球の水素と炭素の9割以上がコアに存在することがわかりました。(コア以外の部分では水素は主に水として存在)
- 従来、地球の水(水素)と炭素は、これらに富む炭素質コンドライトタイプの物質に起源を持つと考えられてきましたが、今回およそ半分が非炭素質コンドライトに由来することが示されました。

高圧高温下でコアとマントル物質の化学反応を見るための実験試料(右)
発表概要
東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻の堤裕太郎大学院生(研究当時)、横尾舜平助教、廣瀬敬教授を中心とした研究グループは、北海道大学の同位体顕微鏡 と大型放射光施設SPring-8のX線とを利用して、金属鉄とシリケイトメルト間の水素と炭素の分配係数を決定しました。金属鉄はコア、シリケイトメルトは地球形成時に地球を覆っていたマグマオーシャンにあたります。今回の実験の結果、地球内部の高圧高温下では水素・炭素ともに、鉄と合金を作りやすいことがわかりました。また水素・炭素の分配係数をそれぞれ別個に調べた場合と比べて、2つが同時に存在すると互いに影響し合うことにより、双方の分配係数とも大きく低下することが明らかになりました。
さらにその分配係数を使って、地球の集積とそれに続くコア形成に関するモデリングを行い、現在観測される海+地殻+マントル中の水・炭素の量やその他の観測量(例えば地球全体に占めるコアの質量割合)などを説明する、コア中の水素・炭素量を推定することに成功しました(地球の水素は、コア中では水素として鉄と合金を作り、それ以外の部分では主に水として存在します)。
また今回の結果、コアを含めた地球全体が持つ水・炭素量がようやく明らかになり、地球を作った材料物質を推定することが可能になりました。従来、地球の水(水素)と炭素は、炭素質コンドライトと呼ばれる水と炭素に富む物質に起源を持つと考えられてきましたが、今回およそ半分が非炭素質コンドライトタイプの物質に由来することがわかりました。

新たに地球へ集積したインパクタ中の金属鉄は、当時の地球を覆うマグマオーシャン中を落下し、シリケイトメルトから水素や炭素を受け取ったのち、塊となって中心部のコアへ落下していく。
詳細については、以下をご参照ください。






