概要
固体地球科学グループでは地殻・マントル・コアからなる固体地球の状態、組成及びその構造の発展過程を様々な時間・空間スケールで総合的に理解することを目指しています。身近な地表地形の形成進化から、時に私たちの生活に深刻な影響を及ぼす地震・火山の研究、長期大規模な地殻変動やそれらの原動力となるマントルやコアでの物質・熱循環などを研究対象としています。実験や観察、観測・データ解析によってリアルな地球の物質や運動の様子を捉える一方で理論計算や大規模シミュレーションで現象を総合的に理解しようとしています。素過程を丹念に追及することもあれば複数の現象を大きな視野で議論することもあります。
本専攻ではおもに、固体地球科学講座、地震研究所、大気海洋研究所、物質構造科学研究所の教員が協力して教育・研究活動を行っています。教員数は5グループ中最大で、それだけ多様な研究対象・研究スタイルがあります。個人研究はもちろん、地震や火山噴火の予知計画、海洋底掘削計画、地球シミュレータ計画などの大規模プロジェクトに関わる教員も多く、関連した研究をすることができます。
固体地球科学講座
私たちの研究グループでは,地殻,マントル,コアからなる固体地球の状態,組成および構造と,様々な時間・空間スケールでの構造形成とその発展の過程を総合的に理解することを目指しています.研究の対象は,地球表層での地震・火山・地殻変動現象と地形形成進化過程,マントルの熱・物質循環と海洋地殻の形成・消滅および大陸地殻の形成・合体・分裂・消滅過程,コアのダイナミクスと地球磁場の成因・変動メカニズムなどです.
このように多様かつ複雑な固体地球を理解するためには,幅広い視野と様々な研究手法が必要です.それは,地震波トモグラフィー,地震発生物理学,数値シミュレーション,高温・高圧実験,地質構造解析,グローバル観測データ解析,岩石物理・化学,地形学などにおよんでいます.これらのアプローチの緊密な連携により,地球表層,地殻,マントル,コア間での物理化学的相互作用を明らかにし,地球内部の諸現象・諸過程を定量的に,また包括的に理解することを目指しています.
地震波トモグラフィーで見えるマントルの構造。
超高圧実験装置。地球内部の物性を知る。
マントル物質の直接観察。鉱物内の元素分布から変形流動過程を知る。
液体金属コアの対流シミュレーション。
固体地球科学グループでは,広範な対象に対して,多様な視点と,様々な手法を用いて固体地球の総合的な理解をめざしています.従って,地震,火山,地形,地球内部のダイナミクス,構造形成など特別な対象や現象に強い興味を覚える人や,理論,計算機シミュレーション,実験,フィールドワークなど特別なアプローチに自信のある人など多様な人材を待っています.全固体地球を包括的に理解するという大きな目標に直接アタックしたいという意欲的な学生も大歓迎です.また,現在進行中である地球内部の変動を計算機のなかで再現しようという地球シミュレータ,海溝型地震発生帯や海洋地殻を掘り抜きマントルまで掘削しようという統合国際深海掘削計画など,日本がリードする巨大プロジェクトに参加し,地球科学の流れを大きく変える研究をすることもできます.また,研究を通して培われる考え方・知識・技術あるいは問題解決に向けての取り組み方そのものを生かして,社会に貢献する意欲のある方も広く募ります.
あなたの中に秘められた能力を,地球の内部で起きている自然現象のからくりを明らかにすることで,大きく開花させてみませんか.
2011年東北沖地震の断層すべり分布(左)といくつかの時刻におけるすべり速度のスナップショット(右)。
地殻の形成・進化を記録する鉱物の化学分離作業のようす。
2014年M6.7長野県北部の地震直後におこなった地表踏査。 地表地震断層による1 m弱の段差が出現していた。
学生の声
参考書・文献
一般啓蒙書・読み物
- 「日本列島の誕生」
平 朝彦 岩波新書
日本列島がどのように形成されたかを具体的に説明している。 - 「大地の躍動を見る」
山下輝夫編 岩波ジュニア新書
岩波書店 ISBN4-00-500359-1
地震研究所の一線の研究者による最新の研究の平易な解説。
教科書
- 物理の世界・極限技術2「超高圧の世界」
八木健彦 岩波講座
岩波書店 ISBN4-00-011172-8 C3342
地球や惑星内部の超高圧高温環境下における物質の振る舞いは、我々の住む地球表面における振る舞いとは大きく異なる。実験技術の発展により次第に明らかになってきた『超高圧高温の世界』について平易な文章で解説している。 - 「地震学 第3版」
宇津徳治 共立出版 ISBN4-320-04637-4 C3044
地震学の定番教科書といえば宇津地震学であり、知らないことが出てくるたびに最初に引く本である。15年ぶりに改訂された本書では基本的内容はそのままにその間の地震学の進歩、特に震源モデルや地球内部構造の複雑性・多様性の記述が増強されている。 - 「地震の物理」
金森博雄編 岩波地球科学選書
岩波書店 ISBN4-00-007832-1 C3344
地震は弾性体中のずれ運動による波動伝播として理解されている。その基礎的な理論体系は1970年台に確立した。この本ではその基礎理論を丁寧に記述しており、出版から四半世紀経た現在でもほぼ変更の必要のない内容となっている。 - 「変動する地球-現在および第四紀」
笠原慶一・杉山新編 岩波地球科学選書 - 「火山とプレートテクトニクス」
中村一明 東京大学出版会