北極陸域から発生するダストが雲での氷晶形成を誘発する
共同プレスリリース
小池 真(地球惑星科学専攻 准教授)
概要
国立極地研究所の當房豊助教、気象研究所の足立光司主任研究官、名古屋大学宇宙地球環境研究所の大畑祥助教、東京大学の小池真准教授らによって構成される国際共同研究グループは、北極圏の氷河から流出した水流によって作られる地形(アウトウォッシュ・プレーン)で発生するダスト(固体微粒子)が、雲の中での氷晶(氷の微小な結晶)の形成を強力に促進し得ることを明らかにしました。
今後、地球温暖化に伴って雪氷が融解し地面の露出が進むと、北極陸域からのダストの発生量は増加すると推測されています。特にアウトウォッシュ・プレーンは、北極圏で発生するダストの主な供給源だと言われています。本研究グループは、北極圏のスバールバル諸島(ノルウェー)のアウトウォッシュ・プレーンで採取したダストが、氷晶が形成される際の「核」として非常に有効に働くことを実験により明らかにしました。そしてこの能力は、ダスト中に1%程度しか含まれない有機物の存在によって高められていました。さらに本研究グループは、スバールバル諸島での大気観測の結果から、大気中の氷晶核の濃度が、北極圏内で発生したダストの影響によって、夏季には冬季よりも1桁高い値となることを示しました。これらの新たな知見は、北極圏上空の雲の中での氷晶の形成プロセスを理解する上での重要な手がかりとなり、気候の予測精度の向上につながるものと期待されます。
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