研究者4人と市民160人が垣根を越えて全国一斉ヘビ調査 ~下北半島から屋久島までヤマカガシの色彩多型の記載に成功~

プレスリリース
久保  孝太(地球惑星科学専攻 特任研究員)

発表概要

北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの細木拓也JSPS特別研究員、京都大学大学院理学研究科博士後期課程の福田将矢氏(研究当時、現:京都大学総合研究推進本部リサーチ・アドミニストレーター)、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻の久保孝太特任研究員、在野研究者の福田文惠氏ら研究者4名と、市民160名からなる市民科学研究グループは、日本固有種のヘビ類ヤマカガシにみられる体の色や模様のちがい(色彩多型)を、青森県の下北半島から鹿児島県の屋久島に至るまで一斉に調査し、その驚くほど豊かな色彩の多様性を明らかにしました。

この地球上には多種多様な生物が生息しています。しかし、研究者の力のみで生物が織りなす莫大な多様性を記述し、多様性がいかに生じ、維持され、消失するのかを追究することは極めて困難といえます。研究者チームは、研究者と市民とが協力して自然界の謎を解き明かす強力なツール「市民科学」により、生物の色彩多型の地理的変異を日本列島の規模で明らかにできるのか、検証しました。今回、日本人にとって身近な存在であるヘビ類・ヤマカガシを対象に、市民は目撃情報を画像とともに投稿し、研究者は野外調査とWeb検索を駆使することで、日本全国から画像データを収集することに成功しました。驚くべきことに、これまで大まかに6種類にまとめられてきたヤマカガシの色彩多型には、少なくとも123種類もの体の色と模様の組み合わせが存在しており、実に多様であることが判明しました。そのうち、模様(斑紋)の大きさのちがいは捕食者に対する戦略への関与が示唆され、今後その創出の仕組みを理解するためには、捕食者の視覚機能に着目した研究の必要性が見出されました。今回の研究は、研究者と市民のタッグが日本列島レベルでの生物多様性の研究に強力なツールとなることを示す重要な成果といえます。

なお、本研究成果は、2025年5月19日(月)公開のロンドン・リンネ協会が出版する動物学雑誌 Zoological Journal of the Linnean Societyにオンライン掲載されました。

全国一斉ヘビ調査
図:本研究の概要図

詳細については、以下をご参照ください。

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