沈み込んだプレートはマントル最深部で“ほうき”のように働く? —— 地震波形が明かす太平洋下のダイナミクスと古代プレートの記憶——

プレスリリース
河合 研志(地球惑星科学専攻 准教授)
ゲラー・ロバート(東京大学名誉教授)

発表のポイント

  • 約8万の地震波形を用いた三次元インバージョンにより、沈み込んだスラブがマントル最深部で大規模低S波速度領域(LLSVP)の縁を滑り込み、超低速度層(ULVZ)物質を巻き込みながら内部構造を変形させている様子を高解像度で可視化しました。
  • これまで仮説にとどまっていたスラブとLLSVP・ULVZとの複雑な相互作用の詳細な動きについて、波形全体を活用した独自の解析手法により立体的に描き出すことに成功しました。
  • もはや地表には残っていない古代プレートの痕跡を地震波形から可視化することで、地球内部に保存された過去のテクトニクス史を再構築するための情報を提供し、地球進化の理解に貢献します。
スラブが最下部マントルの構造に与える影響を示した模式図
(上図)約3000万年前の様子の想像図。(下図)現在の様子。

発表概要

東京大学大学院理学系研究科の河合研志准教授と大鶴啓介大学院生、ゲラー・ロバート東京大学名誉教授による研究グループは、地震波形を用いた三次元イメージングにより、太平洋下のマントル最深部で沈み込んだスラブ(プレート)がどのように振る舞っているかを明らかにしました。約8万の波形データを解析した結果、スラブ が大規模低S波速度領域(LLSVP) の縁に浅い角度で滑り込み、超低速度層(ULVZ)物質を巻き込みながら内部構造を変形させていることが判明しました(図1)。さらに、この研究で解像されたスラブ構造は地表に痕跡を残さない約2億年前の古代沈み込み帯「Mendocino」「Telkhinia」に対応しており、地球深部構造が過去のテクトニクスを記録している可能性を示します。本成果は、波形解析を通じた“地下の考古学”とも呼べるアプローチにより、地球進化史の理解を大きく前進させるものです(図1)。

構造推定結果の断面図
図1:構造推定結果の断面図
地図中の黒線A-A′に沿った、本研究で推定した3次元S波速度構造の断面図。2億年前にMendocino沈み込み帯があったとされる位置(地図中の緑色の線)から南西方向に伸びるスラブ(断面図の青実線の内側部分)が、核-マントル境界(CMB)直上でLLSVP(赤点線の左側の領域)の縁に潜り込み、強い低速度異常やULVZを形成している様子が見え

詳細については、以下をご参照ください。

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