暗黒生態系に潜む原始的古細菌の謎の生態を解明 ——深海底熱水噴出孔の岩石内部に増殖の鍵——

プレスリリース
鈴木 庸平(地球惑星科学専攻 准教授)

発表のポイント

  • 生命進化の最初期に誕生したと考えられる原始的古細菌は、ゲノムと細胞のサイズが小さく、アミノ酸や脂質を合成する能力を欠くため、どのように増殖するのか不明であった。
  • 生命誕生場として有力視される深海底熱水噴出孔で採取した岩石内部で、原始的古細菌は鉱物の隙間に密集しており、そのゲノムとプロテオームの解析に成功した。
  • 発見された原始的古細菌は、周囲の鉱物の働きを用いて自力で合成できない物質を入手していることが示唆された。この様子は生命進化最初期の生き様を反映している可能性が高い。
生命進化最初期の微生物の生息場
生命進化最初期の微生物の生息場

発表概要

東京大学大学院理学系研究科の鈴木庸平准教授を中心とした、同大学大学院院農学生命科学研究科、慶應義塾大学、理化学研究所、広島大学、高輝度光科学研究センターの研究者から成る共同研究グループは、南部マリアナトラフの深海底熱水噴出孔から採取したチムニーの内部を調べた。チムニーの内壁は黄銅鉱の塊で、その内部でシリカに詰まった網目状の隙間に、微生物が密集することが判明した。

チムニーから黄銅鉱の内壁のみを取り出して、その部分からDNAとタンパク質を抽出して配列を決定した。解読されたゲノム情報から、生息する微生物の30%はDPANN古細菌で、生命活動を維持するために必要な遺伝子を多く欠損していたことが判明した。しかし発現するタンパク質に発酵でエネルギーを生産する遺伝子が含まれており、チムニー内部で活発に代謝活動をしていた。

これまで培養に成功しているDPANN古細菌は、宿主の古細菌に外部共生することが知られるため、環境中でも外部共生すると予想されていた。その予想に反し、チムニー内部に優占するDPANN古細菌は、外部共生ではなく、単独で生息していることが示唆された。生育必須遺伝子の欠如を鉱物の働きで補っている可能性があり、宿主が誕生する前の原始的な生活様式を反映すると考えられる。


詳細については、以下をご参照ください。

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