謎の古生物「タリーモンスター」、3D形態解析で脊椎動物説に反証

共同プレスリリース
平沢 達矢(地球惑星科学専攻 准教授)

発表のポイント

  • 近年、3億年前の謎の古生物「タリーモンスター」が脊椎動物であるという説が提唱され、脊椎動物の形態的多様性について見直しが迫られていた。
  • 3DレーザースキャナーとX線マイクロCTにより、150点以上のタリーモンスター化石の3D形状データを得ることで、タリーモンスターの形態学的特徴の解明を進めた。
  • 鼻形態学的特徴を詳細に調べた結果、タリーモンスターは脊椎動物ではなく、脊椎動物以外の脊索動物か、なんらかの旧口動物であることが示唆された。
    The Tully monster
    本研究に基づいて描かれたタリーモンスターの復元画 (絵:迫野貴大氏)

    発表概要

    タリーモンスター(トゥリモンストゥルムTullimonstrum gregarium)は、約3億年前の海に生息していた奇妙な姿の動物です。他の動物からかけ離れた姿をしていることから、タリーモンスターがどの分類群に属するのかはいまだに謎に包まれています。こうした中、近年、タリーモンスターは脊椎動物(注1)だという説が提唱され、注目されています。

    東京大学大学院理学系研究科の三上智之大学院生(研究当時、現在:国立科学博物館地学研究部 特別研究員)と東京大学大学院理学系研究科(兼担)/同大学院新領域創成科学研究科の岩崎渉教授らは、3Dレーザースキャナー(注2)により、タリーモンスターの化石計153点の表面形状の3Dデータを収集し、同じ地層から産出するさまざまな動物化石との比較解析を行いました。また、タリーモンスターの吻部にある歯のような構造をX線マイクロCT(注3)で撮影し、その3D形状を詳細に明らかにしました。タリーモンスターの形態学的特徴を詳細に調べた結果、先行研究でタリーモンスターが脊椎動物である根拠として使われた筋節・脳・鰓孔(さいこう、またはえらあな)・鰭を支持する構造と同定された構造が脊椎動物のそれらとは明確に異なる特徴を持っていることから、タリーモンスターは脊椎動物ではないことが示唆されました。本研究の結果からは、タリーモンスターは脊椎動物以外の脊索動物か、特殊化したなんらかの旧口動物であると考えられます。

    用語解説

    注1  脊椎動物
    脳や感覚器を収めた頭部、その腹側に位置する鰓孔、V 字状の繰り返し構造をとる筋節などの形態的特徴を持つ分類群。現生では、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、顎を持つ魚(シーラカンス、マグロ、サメなど)、円口類(ヤツメウナギ、ヌタウナギ)が含まれる。

    注2  3Dレーザースキャナー
    測定したい物体にレーザーを照射することで、その物体の3D形状を測定する装置。物体の表面形状は測定できるが、内部の様子を調べることはできない。

    注3  X線マイクロCT
    X線を照射することで、物体の微細な内部構造を三次元的に撮影する装置。X線を使うため、3Dレーザースキャナーより扱いが難しいが、物体の内部を調べることができる。


    詳細については、以下をご参照ください。

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