鳥類の翼のかたちは祖先である恐竜で進化した ――化石に残る姿勢から前翼膜の進化を解明―

プレスリリース
宇野 友里花(地球惑星科学専攻 博士課程1年)
平沢 達矢(地球惑星科学専攻 准教授)

発表のポイント

  • 鳥類と爬虫類について、関節した状態で保存された化石骨格の前肢の関節角度を計測し、鳥類のように翼の前縁に「前翼膜」があると、肘関節の角度が低い範囲に収まって化石化することを明らかにしました。
  • 鳥類の祖先系統である獣脚類恐竜について、関節した状態で保存された化石骨格の肘関節角度を計測すると、飛行生態が進化する以前(マニラプトル類)に、すでに前翼膜が進化していたことが分かりました。
  • これまで証拠が得られにくかった軟体部の進化過程についての成果であり、白亜紀末に絶滅した恐竜の生態や、鳥類の体の構造の成立過程についての理解に寄与することが期待されます。

概要

東京大学大学院理学系研究科の宇野友里花大学院生と平沢達矢准教授は、世界各地の地層から産出した化石骨格の姿勢の比較解析を行い、前翼膜は鳥類(注1)の祖先系統に当たるマニラプトル類(注2)で進化し、鳥類に受け継がれたことを見出しました。鳥類の翼の前縁には「前翼膜」という部分があり、その内部には肩と手首を結ぶ「前翼膜筋」という筋肉があります。前翼膜は、羽ばたき飛行の際に最小限の筋肉で翼の動きを制御するのに役立っています。鳥類は恐竜(注3)から進化したことが知られていますが、筋肉や皮膚は化石に残りにくいため、この前翼膜がいつ進化したのかは分かっていませんでした。

今回の解明は、飛行生態が進化する以前に羽毛だけでなく前翼膜も獲得されていたことを示しており、鳥類の祖先に当たる恐竜がどのような生態をしていたのか、そしてそこからどのように鳥類へと進化したのかについての解明につながることが期待されます。

鳥類の翼のかたちは祖先である恐竜で進化した ――化石に残る姿勢から前翼膜の進化を解明―
飛行生態が進化する以前に恐竜系統で獲得された前翼膜

用語解説

注1 鳥類
現在、鳥類は陸上脊椎動物の中で最も種の多様性が高く、1万種近くの現生種が生息している。鳥類系統は、約1億5,000万年前(後期ジュラ紀)までに、恐竜の系統から分岐した。

注2 マニラプトル類
マニラプトル類は、獣脚類恐竜の中でも、鳥類と近縁な動物および鳥類を含む系統である。オビラプトロサウルス類(カウディプテリクスなど)、テリジノサウルス類、ドロマエオサウルス類(ミクロラプトル、ヴェロキラプトルなど)、トロオドン類、鳥類などが含まれる。

注3 恐竜
恐竜は、約2億3,000万年前(後期三畳紀)までに出現し、その後の中生代にわたって陸上生態系の中で大繁栄した。6,600万年前の白亜紀末の大量絶滅で、鳥類を除く恐竜は絶滅した。恐竜のうち、獣脚類という系統の中から鳥類が進化した。

詳細については、以下をご参照ください。

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