大きな地震と小さな地震の始まり方は意外に良く似ている

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プレスリリース
井出 哲(地球惑星科学専攻 教授)

発表のポイント

  • 大量地震データの比較から、大きさの違う地震でも同じように始まる例を多数発見した。
  • ほぼランダムと考えられていた地震の始まり方には一定のルールがあることが分かった。
  • 緊急地震速報の改良限界を示すと同時に、地震発生プロセスの正しい理解に近づいた。

概要

イントロクイズの得意な人は、音楽のほんの出だしだけで曲名を当てる。大地震の発生を警告する緊急地震速報の仕組みにはこれと似た部分もある。地震観測点で観測する揺れの始まりの瞬間に、どこで地震が起こったか推定するのである。では、その地震の大きさを推定することはできるだろうか。これは実は簡単ではない。東京大学大学院理学系研究科の井出教授は、大きさが違うのにまったく同じように揺れ始めることが意外に多いことを示した。北海道東北沖の沈み込み帯(注1)の15年にわたる大量地震波データを精査すると、比較的大きな(マグニチュード4.5以上の)地震と、小さな(マグニチュード2~4の)地震で、その地震波の始まりが極めてよく似たペアが多数発見される。類似ペアは特にプレート境界に発生する沈み込みタイプの地震に多い。つまり、これらの地震の破壊すべり(注2)の最終サイズは現象の進行中にはわからず、もちろん揺れ始めからはわからない。この事実は残念ながら緊急地震速報の限界を示すが、同時にランダムに見える地震発生プロセスが、実はプレート境界にある階層構造(注3)に制約された一定のシナリオに従っていることを示唆し、地震予測に異なるアプローチを提供する。

大きな地震と小さな地震の始まり方は意外に良く似ている
図1:解析地域と大きめの地震(大きな丸:赤=極めて似ている、オレンジ=良く似ている、黒と灰色=その他)、観測点(緑の小さな丸)の分布を表す図。極めて似ている地震とよく似ている地震は陸地のそばに多い。

用語解説

注1 沈み込み帯
海洋プレートが他のプレートの下に沈み込む場所。沈み込むプレートと上盤プレートの間で大小さまざまな地震が発生する。2011年東日本大震災は、本研究地域のプレート境界で発生したマグニチュード9の巨大地震が引き起こした。

注2 破壊すべり
地震は岩盤中の破壊を伴う摩擦すべり運動が、岩盤にたまったエネルギーを地震波として解放することで発生する。この破壊を伴う摩擦すべり運動のこと。

注3 階層構造
地震の断層は、折れ曲がり、分岐、飛びなどが多数存在する複雑な形状をしているが、一部には比較的単純な区間もある。比較的単純な区間は、数キロメートルの地図スケールから、数メートルの露頭スケール、数ミリメートルの顕微鏡スケールでも見つけることができ、入れ子状になっている。このような入れ子状になった断層の構造を、ここでは階層構造と呼んでいる。

詳細については、以下をご参照ください。