月の火山活動の起源をシミュレーションによって解明~マグマの上昇メカニズムの変化による火山活動の長期化~

プレスリリース
西山 学(地球惑星科学専攻 客員共同研究員)

発表概要

東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻の西山 学 客員共同研究員は総合文化研究科広域科学専攻の于 賢洋 大学院生と筆頭とする研究グループの一員として、月内部の数値シミュレーションにより、観測から知られていた月の局地的な長期間の火山活動が、マグマの上昇メカニズムの変化が原因となって引き起こされていたことを示しました(図)。

月のプロセラルム盆地と呼ばれる場所では約40億年前から約10億年前まで火山活動が継続したことが知られていました。しかし、月の天体のサイズは小さく内部が冷えやすいため、30億年もの長期にわたる火山活動がどのようなメカニズムで維持できていたのかはわかっていませんでした。

本研究では火成活動とマントル対流をモデル化した数値シミュレーションによって、1. 古い時代と新しい時代では火山活動の源となるマグマの上昇メカニズムが異なっていること、2. 古い時代の火山活動は放射性元素によって温められた月の深部で生じたマグマが能動的に上昇したのに対し、この火山活動が浅部に遺した高密度物質の濃集領域が再び深部に沈み込む際に発生する反動としての上向きの対向流として駆動される受動的なマグマ上昇が比較的新しい時代の火山活動を引き起こしていることがわかりました。特に、月の浅部に放射性元素濃集域の存在を想定すると、その領域下で局所的にこのような火成活動が顕著になることもわかりました。

本研究の結果は、現在の月において、地殻直下のごく浅い部分にチタンやトリウムなどの放射性元素に富んだ領域が局所的に存在し、しかもそれが月全体にわたる内部の不均質性と深く関係している可能性を提示しました。これは、現在、宇宙航空研究開発機構(JAXA)主導で推進している内閣府の宇宙基本計画での「月面における科学」の一つである「月震計ネットワーク」において、内部構造や地盤特性を知るための観測計画の重要な知見となり得ます。

約30億年前の月内部の温度とマグマ量
図:約30億年前の月内部の温度、 (上図)とマグマ量(下図)の描像

詳細については、以下をご参照ください。

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