はやぶさ2のタッチダウンで観測された小惑星リュウグウ表面の擾乱とそれから示唆される表層と軌道の進化史

プレスリリース
諸田 智克准教授、杉田 精司教授、長 勇一郎助教

発表のポイント

  • 「はやぶさ2(注1)」の炭素質小惑星リュウグウ(注2)への着陸によって1mサイズの岩と大量の赤黒い微粒子が巻き上げられた。これらの赤黒い微粒子は、太陽加熱または太陽による風化作用によってリュウグウ表面が変質してつくられたものであることがわかった。
  • それらの観測にもとづいて、炭素質小惑星が小惑星帯から地球近傍軌道に供給される際の軌道進化とそれに伴う表層地質進化に関する新たなシナリオを提示した。
  • 太陽による変成をうけた/うけていない両方の物質が採取されたと考えられる。持ち帰られるリュウグウ試料の物質科学分析から,炭素質物質の太陽加熱・風化作用の解明が期待される。

概要

2019年2月22日(日本時間)、「はやぶさ2」は炭素質小惑星リュウグウの試料採取を目的とした第一回目の着陸(タッチダウン)に成功した。東京大学大学院理学系研究科の諸田准教授らは、タッチダウンの際に取得された超高解像度画像から、炭素質小惑星の表層地質進化・軌道進化に関する新たなシナリオを提示した。

タッチダウンの反動により、リュウグウ表面の多くの岩石と岩石表面やその隙間に隠れていた大量の赤黒い微粒子が舞い上がったことが観測された。またクレータとの層序学的な関係から、赤黒い物質はリュウグウの表層数十センチメートルから数メートルの厚さで全球的深さに疎らに層状に存在していること、それらは過去のある短い期間にリュウグウ表面物質が、太陽に焼かれることで変質してつくられたことが分かった。この結果は、リュウグウが一時的に現在よりも太陽に接近する軌道にいたことを示している。また、タッチダウン地点の表面には赤黒い物質だけでなく、変成をうける以前の青白い物質も存在していることから、変成をうけていない物質と変成をうけた物質の両方の物質が採取されたと期待される。

はやぶさ2のタッチダウンで観測された小惑星リュウグウ表面の擾乱とそれから示唆される表層と軌道の進化史
図1:ONC-W1によって撮影された第一回タッチダウンの前後のリュウグウ表面の様子。日時は協定世界時。((c)JAXA、東京大、高知大、立教大、名古屋大、千葉工大、明治大、会津大、産総研)

本研究には、地球惑星科学専攻の諸田智克准教授、杉田精司教授、長勇一郎助教、巽瑛理特任研究員、橘省吾教授、田辺直也大学院生、高木直史大学院生、杉本知穂大学院生、湯本航生大学院生が参加している。

用語解説

注1 はやぶさ2
日本の小惑星探査機「はやぶさ」の後継機であり、炭素質小惑星であるリュウグウを探査した。2014年12月に打ち上げ、2018年6月に小惑星リュウグウに到着し、約1年5ヶ月間の近傍観測のあと、2019年11月にリュウグウを出発し、地球に向けて帰還中である(2020年5月現在)。2度の着陸と人工の衝突実験に成功した。

注2 炭素質小惑星リュウグウ
1999年に発見された地球近傍に軌道を持つ小惑星。C型(炭素質)小惑星に分類される。C型小惑星は初期地球に水や有機物を供給した有力候補天体と考えられている。

詳細については、以下をご参照ください。

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