南極大気の精密観測 ~南極域初の非干渉性散乱レーダー観測を支える適応的信号処理技術を開発~

共同プレスリリース
佐藤 薫(地球惑星科学専攻 教授)

概要

国立極地研究所(極地研、所長:中村卓司)の橋本大志助教、東京大学大学院理学系研究科の佐藤薫教授(国立極地研究所客員教授)らは、2015年、南極昭和基地大型大気レーダー(PANSY(パンジー)レーダー; Program of the Antarctic Syowa MST/IS Radar、図1)のISレーダー・モードの観測により、高度200km~500kmにおける電離大気の電子密度を観測することに成功しました。ISレーダーでの電離圏大気の観測は、南極域では初となります。

非干渉性散乱(IS)レーダーは、地球大気と宇宙空間の境界領域である電離圏(高度100km~1000km)の電子・イオンの組成や運動、温度などを最も詳細に調べられる強力な観測手段です。しかし、大きなアンテナと電力を必要とするため、これまで、極域では北極域でしか実施されておらず、南北両極の電離圏を定量的に比較するために南極域でのISレーダーによる観測が求められていました。

また、PANSYレーダーによる電離圏観測では、その設置場所の磁気的特性から、地磁気の磁力線に沿って電子密度の不均一が生じる現象(Field Aligned Irregularity; FAI)による干渉が発生し、多くの時間で観測ができなくなってしまいます。そこで佐藤教授らは、FAI観測専用のアンテナアレイをPANSYレーダーの近傍に設置し、このアンテナアレイから得た受信信号をPANSYレーダーの受信信号と共に適応的信号処理を行うことによって、FAIによる干渉下においても電離大気の電子密度を正確に測定する方法を開発しました。今後、同じ原理を利用することで、FAIの運動や構造を明らかにするイメージング観測も可能となります。

南極大気の精密観測 ~南極域初の非干渉性散乱レーダー観測を支える適応的信号処理技術を開発~
図1: PANSYレーダーとオーロラ

詳細については、以下をご参照ください。

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