5つの研究グループ

地球惑星科学専攻では、5つの研究グループにわかれて研究・教育を行っています。
ここでは、それぞれのグループの研究分野について紹介します。

学生の声

 とある大学院生-物質進化から迫る太陽系形成-
  山田 明憲 (宇宙惑星科学講座 修士2年)

 

私が今取り組んでいる研究は、酸素分子の解離定数を同位体に対して見積もることです。(背景、とくに宇宙惑星科学との関係についてはこの後をご覧ください。)指導教員や研究室の仲間のみではなく、学会や直接訪問で学外の研究者とも議論しながら、研究を進めています。これから大学院へ進学しようとしている皆さんへ、大学院生の日常が少しでも伝わればと思い、自分の研究・普段の過ごし方を簡単に紹介します。

私が所属する研究室は、隕石中の化学・同位体組成から太陽系進化を探ろうとしています。このようなアプローチによって、惑星系形成の理論に制約を与えることを期待できます。特に、私が興味を持っているのは酸素同位体です。酸素原子は、固相、液相、気相のいずれにも安定に存在するため、物質進化の痕跡を見ることが可能となります。

実は、太陽系の平均的な酸素同位体比がいくらであるのか、如何にして様々な酸素同位体比異常が作られるのかは未解明の大問題なのです。太陽系の質量の 99.9 % 以上を占める太陽の同位体比を調べれば太陽系の酸素同位体比がわかります。そこで、物質を用いて太陽について調べる唯一の方法である太陽風の同位体比を測定する試みが行われています。その中で、アポロ計画が持ち帰ってきた月表層の砂の中に、起源が未解明の正の酸素同位体比異常が発見されました。私の今の研究テーマは、この正の酸素同位体比異常の起源を探ることです。具体的には仮説「月表層で観測された大きな正の酸素同位体比異常は地球大気起源である」を同位体比の面からの検証することを目指しています。

日本の人工衛星GEOTAIL ミッションによって、地球熱圏から酸素イオンが飛び出していることが明らかとなりました。酸素イオンのフラックスと、月表層の砂から見積もられた酸素イオンフラックスが同程度です。地球熱圏は酸素原子が最も多く、紫外線により酸素原子がイオン化すると地球から飛び出していきます。酸素原子は少量の酸素分子とバランスしていますから、酸素分子の紫外線による解離定数を求めることで、酸素原子の同位体比がわかります。この酸素分子の解離定数を、同位体種に対して正確に求めることで、仮説の検証をできます。しかし、酸素同位体の天然の存在比は質量数16が 99.763 % 、17が 0.037 %、18が 0.2 % と主同位体が多すぎるため、同位体ごとに実験で解離定数を求めることは困難です。そこで、量子化学の手法を用いて理論的に解離定数を決定することを目指しています。

同位体は質量が異なりますから、ゼロ点振動エネルギーが異なり、この差から吸収ピーク波長が移動します。また、励起状態のポテンシャル曲面の上の運動にも質量の差の影響がありますから、吸収断面積の絶対値が変化します。これらの違いを合わせて計算し、光吸収スペクトル(波長の関数としての光吸収断面積)を求めます。同時に光を吸収した後の解離する確率(量子収率)を求めれば、光解離のスペクトルを求めることができます。理論化学計算から求めた光解離スペクトルと、太陽光スペクトル、分子の密度分布を組み合わせて、光解離定数を求めます。この光解離定数の違いは光吸収直後に、言わば分子に指紋をつけることに相当しますから、その後の化学反応による生成物の同位体比異常の起源を遡ることが可能になります。この取り組みが太陽系内の同位体比異常の起源の解明に貢献できるのではと、わくわくしながら研究に取り組んでいます。

ところで、研究室紹介も合わせてみていただければ気がつくことですが、実は我々の研究室に理論化学の専門家はおりません。そういうときには、専門の研究室を勉強のために訪問します。杉浦教授(私の指導教員)も「行くならしっかり勉強してきなさい」と送り出してくれました。昨年度は、情報通信研究機構、名古屋大学、九州大学、California Institute of Technology へ勉強・議論をしに出かけました。

また、学会・会議でも研究結果を発表し、学外の研究者と議論する機会がありました。昨年度は
EGU2008(4月、オーストリア・ウィーン)、
地球惑星科学連合大会2008(5月、千葉・幕張)、
MetSoc2008(Annual Meeting of Meteoritical Society、7月、日本・松江)、
ISI2008(International Symposium on Isotopomers、10月、日本・お台場)、
同位体比部会2008(11月、愛知・新城)、
LPSC(Lunar and Planetary Science Conference、3月、アメリカ・テキサス州)
に参加しました。英語はあまり得意ではないのですが、こちらに考えがあって、それを伝えたいという意志を前面に押し出せば、拙い英語でも辛抱強く聞いてくれ、議論が成り立ちます。次は、MetSoc2009(7月、フランス・ナンシー)に参加予定です。(実は開催地周辺の観光や食事も学会参加の楽しみの一つであります。)

この一年間はいい機会に恵まれておりました。

研究の他に、大学では週に数コマの講義を受け、セミナーに参加し、学部生演習のTeaching Assistant をしています。講義、セミナーでは周囲の人の研究がどのようなものかわかるだけでなく、なかなか能動的には探さないような情報を得られたり、時にはそれらの情報が自分の研究に役立ちそうだと思えたりし、楽しいものです。TA をすると、人に教えることで自分の勉強にもなります。何れも時間のある限り、参加するようにしています。また、週に一日くらいは遊びに行くようにしています。カメラを持ってあちこち散歩に出かけたり、ピアノを弾いたり、友達と話したりします。大学院生であっても趣味を楽しむ時間は大切と思っていますし、適度な息抜きが頭の整理や見落としていた点の発見、次の新たな発想にも役立っています。

大学院生は1人一つの机を与えられ、ここでデスクワークをします。時には昼寝をしたり、音楽を聴きながら瞑想にふけることもあります。
LPSC でのポスター発表の様子(2009年3月)。質問やコメントをもらう中で、自分だけでは気がつかないことも指摘され、さらに研究が発展します。