5つの研究グループ

地球惑星科学専攻では、5つの研究グループにわかれて研究・教育を行っています。
ここでは、それぞれのグループの研究分野について紹介します。

学生の声

 宇宙研での研究と生活
  小笠原 桂一 (宇宙科学研究所 向井研究室 博士1年)

 

僕は宇宙科学研究所の太陽系プラズマ研究系で探査衛星搭載の電子計測器の開発研究を行う、いわゆる実験系です。そして博士課程進学という決断をしました。その僕が宇宙科学研究所の存在を初めて知ったのは、恥ずかしながら大学院でどんなことをやろうかと悩んでいるまさにそのときでした。当時ただひたすらに研究者になりたいという稚拙な憧憬の虜になっていた僕は、大学の講義もままならないうちに大学院に進学しなければならなくなった矢のような光陰を恨み、自分の無才を嘆く毎日でした。それでも捨てられなかった進学という選択肢です。当然進学案内などに記された諸教授の研究内容などは理解できるはずもありませんでした。そのときに頼りにしたのはただ一つ、小さい頃のNASAのボイジャーが次々に送ってくる惑星の映像に心を奪われ、背筋の凍るような感動を覚えた記憶です。この純粋な、しかし微かな気持ちから、惑星探査の仕事に直接関われると謳われていた宇宙科学研究所の研究室しかないと直感しました。

宇宙研を初めて訪れたとき、僕は幸運にも、僕の指導教官である向井教授と出会うことができました。その経緯はさておき、そのときに初めて実感したのは、科学者として生きるということに僕は全くの誤解をしていたのだということです。お笑いになってくださって構いませんが、今思えば、当時の僕にとって科学者というものは理論家あってこそのもので、その中でもパラダイムシフトを起こすような中核となって初めて報われるのだと考えていました。ところが向井先生の印象は違っていました。向井先生は、今後宇宙研と欧州の共同で行われる水星探査の話をいかにも楽し気に、学部生の僕にもそれが十分伝わってくるような巧みな話し振りで聞かせてくださいました。そして、先生がかつてなさった磁気圏探査の仕事やハレー彗星探査の仕事に自信と誇りを持っておられるのがはっきりと伝わってきました。そのときの僕は、自分が求めていた生き方にはっと気づかされた思いでした。こうやって一つでも、絶対に自信の持てる仕事をできたらいい、そういうことができるようになりたいという気持ちです。僕は職人になりたかった。そして科学者も、一人の職人だと思いました。僕が修士2年間で学んだ一番のことは、科学者の諦念ということでした。

宇宙研での生活について少しだけ触れておきます。宇宙研で学ぶ学生は決して少なくありません。コロキウムやゼミは本郷の研究室とほぼ同じような形式で行われていますので特筆しませんが、最も強調できるのは人工衛星搭載用計測器の実験較正設備です。実際に宇宙に打ち上げる装置を設計製作できるのは、他では味わえないと思います。我々太陽系プラズマ研究系が現在関わっているミッションは数多く、運用中のものであけぼの(オーロラ)、GEOTAIL(地球磁気圏尾部探査)、のぞみ(火星探査)、また計画進行中のものでINDEX(オーロラ)、SELENE(月探査)、MMO(水星磁気圏探査)、SCOPE(地球磁気圏探査)等があります。それに加えてロケットによる実験も行われます。また工学系の研究者との交流もあるので、視野を広く持つことができると思います。

最後に一学生として、地球物理学を学ぶということの価値について考えてみました。基礎科学は20世紀を通して大きく進歩しました。一般相対性理論、量子力学、遺伝子工学と挙げてみればきりがなく、この進歩は今までのどんな時代に成されたものよりも大きくまた急速で、人類にとって支配的な一つの価値体系を作り上げたと言えるでしょう。今日の社会はこの科学革命の上に作り上げられたと言っても過言ではありません。しかしその進歩を、未来永劫にわたって無限であると言い切ることができるでしょうか。例えば素粒子物理学の検証は、今や非常に大掛かりな実験装置なくしては難しく、国家的プロジェクトとして莫大な予算を消費し行われています。基礎科学として理学を考えたときにさえ、今や国家の理念や経済を無視しての進歩はありえなくなっているのです。そしてその進歩は、ゼノンのアキレウスと亀のように、指数関数的にスピードを緩めていくことでしょう。これに従って科学とは応用科学を指すようになり、本来的な基礎科学は次第に消滅してしまう気さえします。この状況の中で、新しい基礎科学としての地球物理学を再度見直す必要があるのではないでしょうか。地球物理学は現象を扱う自然科学です。現象を目で見たり、感じたりすることはごく当たり前にできます。問題は現象に内在するパラメータを抽出し、一見複雑系のように見える自然に対して一つの秩序と原理を見出していくことです。物理学との大きな相違点は、その観点からすると、物理現象を取り上げる際に捨象を伴わない点でしょう。捨象には莫大な努力を必要とし、同時に進歩に経済的制限を与えます。地球物理学を新しい基礎科学と称したのは、まさにそこに起因します。地球物理学を複雑系の科学と一元的に捉える見方もありますが、僕はむしろ自然から原理と法則を抽出するプロセスそのものに価値があると考えます。僕のテーマは宇宙空間での電子の観測ですが、複合的な世界でありながら光を媒介せず直接観測(in-situ観測)で物理現象とその源を検証できるという点にやはり大きな魅力を感じています。