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惑星大気の探査と研究
今村 剛(宇宙科学研究所)

惑星の表層を包む流体圏、すなわち大気は、どのように作られ、どのように循環してエネルギーや物質の輸送を媒介し、如何にしてその惑星の気候を形作るのか。このような疑問に対して観測やデータ解析を主な手段として比較惑星学の見地から答えていくのが、JAXA宇宙科学研究本部の惑星大気グループです。太陽系の惑星の見た目の多様性は大気圏の多様性を反映しています―この多様性が生まれる仕組みを解明し、惑星気候学という大きな枠組みの中に地球を位置付けたい、という想いが我々の原点です。 私自身は地球型惑星の大気の流体力学に特に興味があり、その観点から自らの研究と大学院生の指導を行っています。

地球・火星型大気循環と金星・タイタン型大気循環

日本の惑星大気コミュニティは2010年に金星に周回衛星PLANET-Cを送りこみ、世界最先端の惑星気象研究を可能にする研究環境を手にしようとしています。この計画は、金星の厚い大気層の3次元運動を多波長のリモートセンシングによって可視化して、高速東西流などの金星気象の特徴がどのようにして形作られるのかを明らかにし、ひいては地球型惑星の気候システムの統一的な理解に近づこうとするものです。計画には全国の大学などの研究機関が参加していますが、その中核を担うのが我々です。

PLANET-Cの多波長撮像が映し出す金星大気の様々な姿

海外の探査機によって得られたデータの解析にも力を入れています。これまでに米国のMars Global Surveyorや欧州のVenus Expressによる観測データから様々な大気現象を発見し、学生の皆さんと興奮を分かち合ってきました。既に海外の研究グループが利用したデータであっても、世界観の異なる人が見れば異なる姿が見えてくるものです。また探査機による観測に加えて、地上の大型望遠鏡を用いた惑星大気観測も大きな柱です。解像度は探査機に及びませんが、波長分解能など、地上の装置が有利な点を生かしています。

惑星周回機と地上局を結ぶ電波を用いて惑星大気の層構造を探る電波掩蔽観測も我々のお家芸です。今は月探査「かぐや」でこの手法を使い、存在も定かでない月面近くの希薄な電離大気の検出に挑んでいます。次のターゲットはPLANET-Cによる金星大気です。

まもなくPLANET-Cがもたらす金星の観測データは、世界の研究者が長く待ち望んできたものであり、まさに宝の山であるはずです。これを自らの創意工夫で解析し、新たな価値観を創出せんと夢見る野心的な若者を、大いに歓迎します。