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グループの活動紹介
重力・宇宙測地研究グループ (地震研究所)

地震研の茶坊主こと「なまづ君」とOliviaさんの会話を通じて,地震研の重力・宇宙測地研究グループの様子をお伝えします.登場人物のOliviaは米国コロラド生まれの女性(?)で博士3年生です.
http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/okubo も見てください)

なまづ: ちわー.あれ、Olivia はんしか、いてないの?こら都合ええわ.

Olivia: どういう意味?大久保先生は雑用に追われて今,席を離れてらっしゃるの.「『貧乏ヒマなし』が正しいか『稼ぐに追いつく貧乏なし』」が正しいか...」なんて,ブツブツいってたけど,大丈夫かしら?

なまづ: それにしても最近、Oliviaはんと連れだって、火山調査と称して三宅島まで行ったり、桜島の観測といって鹿児島へ行ったり、怪しいですなあ.

Olivia: なにも「称して」行っているわけじゃないの.それに東海地方の御前崎や、伊豆半島にも年間数回、絶対重力観測に(と称して ?)行ってるのよ.

なまづ: 学生実験でもそんなのありましたな.

Olivia: ちょっと誤解しないでほしいけれど、絶対重力といっても,原子時計と安定化He-Neレーザを使った最新鋭機で、10億分の1G(1マイクロガル)まで精度があるの.

なまづ: ふーん.で、なんか、おもろいことがわかったんですか?

Olivia: そうね、三宅島の噴火と山頂の大陥没のことは知ってる?2000年7月8日に山頂火口原が,わずか4分で300mぐらい陥没するという大事件があったのよ.穴の直径は最初は800mぐらいだったのが,50日かけて直径1600m,深さ450mまで成長したってわけ.

図1.三宅島の外観.
(a)2000年の活動前はなだらかな火口原が広がっていた(1983年撮影)

図1(b)2000年の活動で,火口原は大きくえぐれてしまった(直径1600m,深さ400m).

なまづ:地殻変動で地表面が何メートル沈降したとかとは聞きますが,その親戚ですか?

Olivia: ピンボケだけど当たらずとも遠からずってとこかな.大久保先生と助手の古屋さんがカルデラ内で測定したのが7月6日だったのよ.つまり2日後には地の底に飲み込まれてしまうとも知らないで,火口原で測定してきたってわけ.こんな貴重なデータは,ちょっとないでしょ.

なまづ: ヒェー!悪運の強い人たちでんなぁ.でも地面の下がスカスカになってたんでしょうから,カルデラの重力は随分,弱まってたんとちゃいます?

Olivia: 見かけによらず鋭いわね.そのとおりで,下の図2(左)をみると,山頂部で約150マイクロガルも減ってることがわかるでしょ.解析してみると,マグマの抜け殻が地下1.5kmぐらいの所にあって,もっと深い5kmぐらいのところにもマグマ溜まりがあるらしいことがわかったのよ.

図2(左)2000年7月の時点での三宅島の重力変化.
1998年の値からの変化量をマイクロガル単位で示す.山頂部に150マイクロガル近い,大きな重力減少が見つかった.西側の100マイクロガルを超す重力増加は,海底噴火を起こしたマグマがシート状に貫入したため(ダイク).

(右)地下の火山活動モデル.
Deflation=減圧源; 深さ5km, 8千万 m3
Cavity=空洞生成; 深さ 1-2km, 径300 m(1億m3 )
Dyke Intrusion= ダイクの貫入: L=6km, W=15km,U=2m

なまづ: と、いうことは、これからも重力観測を続ければ,地下の物質移動(マグマ本体の移動や,マグマからの脱ガス)を重力変化としてとらえられるかも...こんな観測、行ってみたいです.大学院生でも参加できまっか? 」

Olivia: もちろんOKよ。たとえば、このデータの中には、研究室の大学院生の一人の観測値も含まれているの(下の写真).2000年の有珠山噴火の時には、研究室の女子大学院生に「先生、行かないんですか?」と突きるあげられて(?)、彼女が主体的に行なった観測もあるわよ。もちろん,安全には十分配慮しているんだけど...地震や火山観測に主体的に参加したい人は,地震研究所に来るといいと思うわ.熱いハートで厳しい観測に打ち込み,クールな頭脳でデータの分析や理論を作り上げるというのが,地球科学の醍醐味だもん.

図3.三宅島火山活動調査に参加した,大学院生T君.3週間前にきた時は,普通の駐車場だったのを知っているので,不安げである.そのときは綺麗だった公衆トイレが,廃墟となって背景に写っている.(2000年7月末撮影)

なまづ: へへー、おみそれいたしました.ところで、学生の指導・就職状況は、どないな具合でっか?

Olivia: そうね.まず助手の古屋さんは数年前に地球回転の仕事で博士号をとったばかりの,ばりばりの若手研究者なので頼りがいがあるわね.一昨年の6月には測地学会賞(坪井賞)を授賞されたくらいの切れ者よ.いまは合成開口レーダをつかった地殻変動の解析(ほら,神戸の地震のときにでまわった虹色の干渉パターン)をやっているの.それと,人工衛星をつかった精密重力計測ミッションにも興味があるといってたわ.上の写真のT君は,2年前の測地学会で優秀学生賞をとったぐらいだから,指導面でもまずまずじゃないの?学生は,現在は D1,M2の大学院生が各1名で,それぞれ合成開口レーダと火山の重力をテーマにしてるの。

なまづ:そんなたくさんの種類のデータをあつかってどうすんの?

Olivia: 地殻変動から力学的な情報がえられるけど,マグマ・熱水などの物質移動の検知能力はないの.それを重力データが補うっていうわけ.

なまづ:なるほど.ところで,学生さんの就職状況は、どないな具合でっか

Olivia: これまでに指導した大学院生の就職状況は,大学助教授1,国立機関研究員1,民間機関研究員1,医学系出版社1,銀行1って具合ね. 「宇宙技術、重力場、Slow Deformation」などのキーワードに関心ある人はコンタクトとってみるといいわ.実際,今D1の学生さんの修士論文では,合成開口レーダで1996年鬼首(おにこうべ)地震の地殻変動を見事に検出してたのよ.下の図では,衛星から地面までの距離が,地殻変動前(緑線)から地殻変動後(赤線)に変わるときの距離(視線方向)変化を示しているの.逆三角形型の奇妙な縞模様が,地殻変動域になっていて,約10cmぐらいの変動が見えているのよ.

なまづ: なるほど,いろいろと参考になりました.最後にOliviaはんの個人情報を.

Olivia: ...身長140cm,体重250kg,手3本、足3本...

なまづ: そら、化け物や...

Olivia: 失礼な!スマートで賢い絶対重力計です.皆さんと,観測にいける日を待ってますぅ(お後がよろしいようで)

図4. 手(?)3本,足3本,体重250kg,身長140cmのOlivia嬢こと,FG5絶対重力計