研究紹介
マイク・コフィン (海洋研究所)

巨大火成岩岩石区(LIPs)
 地球の歴史の中で、何回かのきわめて大規模な火山活動が起こった時代がありました。その時に噴出した多量の火成岩で埋め尽くされた地域を「巨大火成岩岩石区」(Large Igeneous Provinceの略でLIPs、リップスと読む)と呼びます。これには海台、陸や海の洪水玄武岩、海底に沈む山脈や海山などが含まれます。私たちの研究グループでは、これらのリップス がどのように形成されそして発達してきたかを地球物理学や海底掘削のデータから明らかにしようとしています。研究の目的は、リップスの形成に関与しているマントルのダイナミクスを理解すること、リップスの形成に際して起こる火山活動や地殻の運動を明らかにすること、そしてさらにリップス形成が地球環境にどのような影響を与えたかを評価することです。研究の対象としている場所は、オンドンジャワ海台(図の中ではONTO)、ケルゲレン海台とブロークン海嶺(GERG/BROK)、そしてマニヒキ海台(MANI)です。2003年にはマニヒキ海台で海洋研究所の研究船白鳳丸を使った地球物理・地質の調査を、さらに2004年から2007年にかけてオントンジャワ海台の調査を予定しています。


図1:2億5千万年前以降に形成された巨大火成岩岩石区(リップス)の分布。

海底を襲った隕石衝突
 巨大な隕石は地球史において何度も地球に衝突してきました。地球科学者はこれまでこのような地球外天体の衝突が地球環境に与えてきた影響について大きな関心を払ってきました。特に白亜紀と第三紀の境界(およそ66百万年前)に起こった生物の大量絶滅(恐竜の絶滅も含まれます)は巨大隕石衝突が引き金になったと考えられており、その隕石衝突の跡はメキシコのチクラブクレーターとして残っています。クレーターの統計をもとに推定すると、1億5千万年前以降、直径10キロを超える巨大隕石がおそらく4?7個は深海底に衝突したと考えられます。しかしながら現在まで深海底では隕石衝突の痕跡が見つかっていません。私たちはリモートセンシングのデータを使って全地球規模で深海底に眠る隕石衝突跡を探しています。

図2:1992年12月7日、宇宙探査機ガリレオによって撮影された月。写真の下の方に見えるきわめて明るいクレーターはティコ衝突跡。その他の暗い部分は衝突跡の盆地が溶岩で埋めつくされていることを示している

プレート沈み込みのはじまり
現在では、海洋底拡大やトランスフォーム断層、沈み込み、といった定常的なプレートテクトニクスについては比較的よくわかってきているといえます。しかし、このようなプロセスがどのように始まったのか、そしてあるタイプのプレート境界が別のタイプの境界にどのように変化するのかについてはほとんどわかっていません。私たちの研究グループでは、地球物理学的データをもとにして、どのようにプレート沈み込みとそれに伴う地震や火山の活動が始まるのかを研究しています。特に、沈み込みの開始につながりそうな地質学的な場所に焦点をあて、オーストラリアプレートと太平洋プレートの境界で、ニュージーランドの南方に位置するマッコーリー海嶺系を主な研究対象としています。この海域での地球物理探査は2005年に計画されています。


図4:マッコーリー海嶺系の3次元的海底地形図。カラーバーは水深を示す。

発散型の大陸縁辺
 大陸縁辺部は、炭化水素や金属資源の産地として地球上で重要な場所であり、また人口密度が高い地域ために地震や地滑り火山や気象災害を考える上でも大事な場所です。このように社会的にも経済的にも重要な場所であるにもかかわらず、大陸縁辺部でのリソスフェアの変形やマグマ活動、物質循環や堆積過程、そして水の循環などの基本的なプロセスはあまりよくわたっていません。私たちは大陸縁辺が開いていく進化の過程を支配する物理的・化学的・生物学的なプロセスとそれらの相互作用を理解しようとしています。現在そのための調査のターゲットとしている場所は、エランバンク(南方インド洋)、東アフリカ、南東オーストラリアです。

図5:地震波探査による地殻断面。エランバンク(ケルゲレン海台の南)の中腹に流れた溶岩流の存在を斜めに傾いた反射面として見ることができる。