5つの研究グループ

地球惑星科学専攻では、5つの研究グループにわかれて研究・教育を行っています。
ここでは、それぞれのグループの研究分野について紹介します。

学生の声

「興味あること」で進学

安井 良輔(大気海洋科学講座・博士2年)

 

はじめに

 大学院進学(特に他大学からの進学)を考えている方に向けて、私が地球惑星科学専攻に進学したときの様子や現在の研究生活がどのようなものなのかを書きたいと思います。私の場合、大学入学から現在まで、興味の対象がいろいろと変わっていった結果が今の研究・所属につながっているため、学部での生活から振り返ってみました。他大学から東大地惑専攻に進学を考えている方の参考になればと思います。

 

学部1年~3年:気象に興味を持つきっかけ

 学部生の時は、大阪大学理学部化学科に所属していました。当時の私は、物理化学や有機化学に興味を持っており、特に分光学が好きで、自分で調べたり分光学の先生に本を借りて読んだりしていました。大学の講義が終わると、体育会スキー部でクロスカントリースキーをやっていたので、多くの日はランニングや筋トレなどの練習をしていました。練習のない日は、図書館にこもって数学や物理の本を読んで優雅なアフター5を過ごしていました。そんな優雅なアフター5もスキーシーズンに入るとできません。毎日合宿をして、雪が降りしきる中、長距離を走らなくてはなりません(写真1)。

クロスカントリースキー

写真1:秩父宮杯・秩父宮妃杯・寛仁親王杯 第85回 全日本学生スキー選手権大会
(2012年2月29日) 岩手県八幡平市にて

屋外で行なう競技であるため、気温や雪質などがスキーの滑走性に大きく影響します。「なんでこんな雪質の雪が降るんだ?」という疑問と、「大会で少しでも上位狙いたい」という気持ちも相まって、気象にも興味を持つようになりました。

 学部3年生の冬になると研究室配属が行われ、他ではなかなかできないだろう思い、放射化学研究室に所属しました。卒業研究は、隕石構成元素の中性子核反応断面積の測定を行ないました。宇宙から飛んでくる隕石は、高エネルギーの宇宙線にさらされているため隕石内部に放射線を出す元素が含まれていることがあります。ここで得られた核反応断面積を用いることで、隕石から出る放射線量からその隕石が宇宙空間を漂ってきた時間の推定を精度よくすることができるようになると考えられます。ここでの、実験用原子炉や加速器を使用した実験の経験は忘れられないものとなりました。

 

学部4年~大学院入試:大学院決め

 学部4年生の春になると大学院進学を考え始めました。卒業研究で行っていたことはとても興味深い内容でしたが、気象にも興味を持っていたため、思い切って大学院から研究分野を変えてみようと思いました。

 大阪大学には気象学の研究室がなかったので、インターネットを使って気象の研究ができる大学を調べました(もう半年早く調べておけば、時間に余裕があったかもしれない)。そこで東京大学の地球惑星科学専攻で研究できることを知りました。ちょうど6月に院試ガイダンスがあることを知り、そのガイダンスに参加しました。そこでどんな研究がされているかを聞き、院試を受けようと思いました。

 受け入れ先の教員によっては院試の科目指定があります。専門科目ではなかったですが、多くの教員が指定している数学・物理を選択しました。院試に向けては、複素解析などを復習していた気がします。同時に大阪大学の化学専攻も受けたので、有機化学の反応をよく勉強していたような気もします。地球惑星科学専攻の院試は、専門性の高い内容ではないので、院試勉強は学部1~2年の復習が中心になってくると思います。地惑専攻の院試には小論文があるので、その内容を書くために、自分がどんな内容に興味がありそうなのか、インターネットで少し調べました。小論文の内容は面接の時に使われたり、その後の研究室訪問でも訪問先の先生が見たりするので、事前に書く内容を準備していくとよいです。

 

研究室訪問:所属研究室の決定

 筆記試験、面接(めちゃ緊張する)を終え、合格通知がくると研究室訪問をします。私は、ほとんど何も調べずに院試を受けたので、柏キャンパスにある大気海洋研究所も含めて多くの研究室を回ってお話を聞きました。

(何も調べずに行ってもなんとかなりますが、今の研究室の先輩には、『何も知らないやつが来た、大丈夫か。』みたいな感じに思われていたらしいので、事前にどんな研究室があるか調べたり、院試前に研究室訪問をしたりしておくとよいでしょう。教員の方は快く時間を割いてくださると思います。)

 研究室訪問する場合、教員の話だけでなく、学生に会って話を聞くことをお勧めします。私は、その研究室に学生がどれくらいいて、どんな研究をしていて、どんな生活を行なっているのかなどを聞いて回りました。研究室は、他ではなかなかできない中層大気の研究を行なっている今の研究室に決めました。

 

修士課程での生活

 4月になって研究室に所属すると、まず基礎的な勉強から始めます。これは、東大内部から進学する人も他大学から進学する人も同様でした。他大学から来る学生も多いので、他の研究室でも同様だと思います。さらに、私の場合は、研究テーマに関わる電離圏の勉強もしました。本格的な研究は、夏を過ぎたあたりから始めたような気がします。

 今、修士課程を振り返ってみると、充実した生活だったと思います。研究面では、2つのテーマの研究を行ない、学会発表も多く行なうことができました。この専攻に来てよかったと思うことは、他の大学と比べて学生同士での研究内容についての議論が多いことです。これは研究を進める上で参考になるので、大変よい環境だと思います。また、研究面以外も、講座の忘年会に出たり、気象夏の学校で知り合った気象庁の方や研究室の先輩とマラソン大会に出場したり(写真2)、大気海洋分野の学生で遠足に行ったり、春にはお花見をしたりと楽しく過ごせました。

 

マラソン

写真2:マラソン大会に出場した時の写真(2017年3月5日) 荒川河川敷にて

 

博士課程での生活

 博士課程(現在)では、修士課程での研究内容を投稿論文にしたり、学会発表したり、新しく研究を始めたりしています。新しく始めた研究は、学部生の時に学んだことが生かせるような内容にしています。家で寝る以外の時間はだいたい研究室に居て、大学にいる間は自分の研究をしたり、週に数回ある教科書読みセミナー・論文紹介セミナー(研究室内)、または気象学セミナー(講座内)の準備をしたり、学生同士で喋ったりしています。また、平日の夜や週末には、根津神社周辺をランニングしたり、ローラースキーの練習をしたり、一日中関東近郊の山に走りに行ったりと、充実した毎日を送っています。

 

研究内容

 最後に、私の研究の概要を紹介します。修士から博士課程を通して、中間圏や下部熱圏(高度50~150 km)の大気力学を中心に研究をしています。中間圏や下部熱圏の気象が私たちの生活に直接関わってくることは、おそらくないと思いますが、中間圏や下部熱圏は、対流圏や成層圏の下層大気だけなく、高高度にある電離圏への“入り口”の領域であることから電離圏からの影響も強く受ける場所です。そのため、下層大気では見られない現象が多く起こりますが、観測の難しさなどからまだよく分かって現象も多い領域です。この領域の風や気温などのデータから、大気波動の発生・消散やその要因、またこれらの大気波動が駆動する大気大循環を調べています。

 修士課程1年では、南極の昭和基地に設置されているMFレーダーと呼ばれるレーダーを用いた中間圏の水平風の解析を行ない、昭和基地上空の中間圏での重力波活動度の季節変動や年々変動とその要因を調べました(図1)。

fig1

図1:(a)南極の昭和基地上空の東西風擾乱の分散の季節変動。
(b)それぞれの年々変動の大きさ。横軸は季節、縦軸は高度を表す。
(Yasui et al. [2016]より)

さらにこれらの解析から昭和基地上空の重力波活動度と熱帯の降水量の年々変動がよく対応していることがわかりました(図2)。これは、熱帯での発生した重力波が南極の昭和基地上空まで伝播する可能性を示唆しています。

fig2

図2:昭和基地上空の南北風擾乱の分散(実線)と緯度10°S-20°S、経度0°E-80°Eでの年平均降水量(鎖線)、
緯度0°S-10°S、経度0°E-80°Eでの年平均降水量(破線)。 (Yasui et al. [2016]より)

 また、修士論文や博士課程1年での研究では、衛星観測データや数値モデルのデータを用いて、中間圏および下部熱圏での大気波動による平均流加速の大きさや大気波動の発生要因などを調べました。現在では、中間圏や下部熱圏での大気微量成分(CO2、O3、NOx、H2Oなど)の化学反応による大気大循環の変化などの研究を始めています。

 

最後に

 長くなってしまいましたが、私はこのような感じで今に至ります。この内容が皆さんの進路決定のお役に立てるかわかりませんが、少しでも参考になれば幸いです。