5つの研究グループ

地球惑星科学専攻では、5つの研究グループにわかれて研究・教育を行っています。
ここでは、それぞれのグループの研究分野について紹介します。

学生の声

―鉱物の将来性―
匿名希望

 

1.鉱物のいろいろ
わたし達の身のまわりには様々な鉱物があります。生活用具として古代では石器や装飾品として利用され、現在では工業用品として人工結晶の利用が急速に広まっています。地球上で最も硬いダイヤモンドは研磨・切削・精密加工などに利用されています。ルビーとサファイアは時計や計器類の軸受け石になり、水晶は時計や各種電気精密機器の部品として使われています。また、ルビーはレーザー光の発振にも使われています。

ほとんどすべての鉱物は結晶です。結晶は原子やイオンが規則正しく配列しており、その中に入る原子やイオンの位置は決まっています。原子やイオンの骨組みをその物質の結晶構造といいますが、鉱物はこの結晶構造の違いで大きく分類され、さらに含まれる元素の違いで細かく分類されています。逆にいえば、化学組成が同じでも結晶構造が異なれば別の鉱物として名称も異なります。鉱物の種類は約3000種あるとされていますが、地球上の元素103種類のいろいろな組み合わせで多数の鉱物ができています。典型的な結晶の特徴は、結晶がいくつかの平面で囲まれた幾何学的に整った形をしていることです。面は平らで面と面の間は稜(直線)でつながっています。これは自然物としてはたいへんめずらしいことです。結晶の中では原子が規則正しく配列し、この配列の結果、鉱物は幾何学的な外形をしています。これらの構造は外見からでは結晶とは見えませんが、X線回折によって明らかとなりました。固体物質が一般に結晶であることは、固体と関係の深い自然科学や工学にとって非常に重要であり、結晶学はこれらの基礎として不可欠の学問になりました。

鉱物で多くの人が興味を持つのは宝石だと思います。宝石の魅力はその色彩です。身近な例として誕生石があります。生まれた月にちなんだ誕生石を身につけると幸運が訪れるといいますが、それはそれぞれの石がある意味を象徴しているとされ、季節感も感じられます。例えば、5月は緑(エメラルド、ひすい)、7月は赤(ルビー)、11月は黄色(トパーズ)などです。では、宝石の色の原因はどこにあるのでしょうか。一つの原因は結晶の中に含まれる遷移金属イオンです。遷移金属イオンは結晶の主成分または微量成分として含まれていますが、それらがある特定の波長の光を吸収します。そうしますと、吸収されなかった波長のみが透過してある色として私達の目に写ります。遷移金属イオンの種類や陰イオンとの結合距離の違いによって吸収される光の波長は異なります。ルビーとエメラルドにクロムが不純物として含まれると、ルビーは深紅色に、エメラルドは青緑色になります。同じクロムイオンでも結晶構造が異なると色も変わってきます。アクアマリン、ペリドット、ひすい、シトリンなどの色は鉄イオンが原因となっています。その他に、カラーセンターといわれる結晶の電気的バランスによる色の違いや、2種類の陽イオンが結晶内に含まれ、相互に影響し合っていることによる色の違いがあります。

次に人工結晶や工業材料としての鉱物について簡単に述べます。人工結晶には2種類あります。1つは天然鉱物と同じ化学組成と結晶構造を持った石で色や硬度など諸性質が天然鉱物と同じもので、もう1つは、天然鉱物と外観は同じですが化学組成や諸性質が異なるものです。その他には天然には存在しない結晶で電子機器や工業材料として開発されたものがあります。工業用に合成されたものでもっとも身近なものは紙やすりです。やすりの表面のザラザラした物質は人工ガーネットです。また、あまり目にすることはありませんがダイヤモンド、ルビー、サファイア、水晶などがあらゆるところで利用されています。ダイヤモンドは地球上の物質の中でもっとも硬いので研磨剤として非常に重要です。天然ダイヤモンドのうち宝石になるのはわずかで、天然ダイヤモンドの約8割と合成ダイヤモンドはすべて工業に用いられます。いろいろな材料の穴あけやガラスカッターなどがあり、また熱伝導性が優れていますので、LSI(大規模集積回路)の放熱板に用いられたり、次世代の半導体材料としての研究も進められています。

ルビーとサファイアは鉱物としてはコランダムといわれ、黒色のものは研磨剤や舗装道路に用いられます。きれいな単結晶をしているものは精密機器の部品として必要ですし、ルビーはレーザーの光源になっています。

コランダムと呼ばれるルビーとサファイア
(いろいろな色の水晶) 水晶は時計、ラジオなどの重要な部品として利用されています。自分の時計に“Quartz”とあったら、その時計には水晶が振動子として利用されています。
 半導体に用いられている物質はシリコン結晶です。このように、鉱物は工業を発展させるためにとても重要な物質なのです。
上へ

2.研究のきっかけと研究室
私が鉱物学を専攻するきっかけとなったのは、大学の講義で色(発色)の原因をきいて鉱物(結晶)に関心を持ったからです。以前から宝石や化石などある程度は地学に関心はありましたが、物理や化学は苦手で、原子とか分子とか肉眼で見えないものにはあまり関心はありませんでした。しかし、鉱物の外形や色など肉眼で見える変化に興味を持ち、例えばルビーは酸化アルミニウム(Al2O3)のなかの数百個に1個くらいの割合でアルミニウムとクロムが入れ替わると赤くなるということ、また赤色しかないと思っていたガーネットにオレンジ色や緑色があることを知り感銘をうけました。さらに、結晶学の講義を受けたとき、結晶の材料としての利用法とその開発法について学び、新素材の開発に関心を持ちました。そこで、結晶の詳しい原子の分布など構造を知るためにはX線による分析が必要であることを知り鉱物学の本研究室に所属しました。

私の研究室は鉱物学の中でも天然鉱物を調べるのではなく、主に人工的に結晶を作り構造を調べています。そして将来性のある物質とその生成方法の開発を行っています。はじめは過去の研究で発表されたものやすでに利用されているようなものを作り、使用する試薬を変えるなどして新しい物質を作ります。もちろん目的のものができない場合もありますので、その場合は生成条件を変えて作り直します。新しい物を作るにはその生成方法に再現性がなければなりません。つまり、同じ条件では同じ物ができるということです。偶然に新物質ができてもそれがどのようにできたのかがわからないと大量生産ができないからです。そして、できた物質が本当に目的のものなのかそうでないのかを調べるためにX線や放射線を用います。したがって、私達の研究室の学生は全員、放射線取扱者の資格をもっています(この資格は入学後に講習などを受けて取得できます)。X線での分析は原子単位で構造を調べることができます。分析用のソフトは一応ありますがソフトに対応できるデータに作り直さなければならない時、私達は自分でソフトを作ります。また、分析がうまくいかない時やもう少し「こうできればいいの」にというときは自分達で装置を作ります。現在、私達の研究室では、触媒や吸着剤として利用されているゼオライト系物質、工業的に将来性のあるガーネット系物質、磁性鉱物や金属合金結晶などの材料物質の合成をそれぞれ行っています。

合成した鉱物のSEM写真1
合成した鉱物のSEM写真2

私は合成結晶ではなく天然鉱物を用いて新しいX線解析手法を開発しています。X線によって結晶内部の原子の配列はある程度知ることができますが、ある一定のエネルギーのX線では区別できない元素があります。それを区別する方法を開発し、その有効性を試しています。いつか私の手法が多く利用され材料開発に役に立つことを祈っています。

天然鉱物のエピドート
天然鉱物のピーモンタイト