5つの研究グループ

地球惑星科学専攻では、5つの研究グループにわかれて研究・教育を行っています。
ここでは、それぞれのグループの研究分野について紹介します。

研究・プロジェクト紹介

地球の過去から環境変動の仕組みを学ぶ
多田 隆治 (地球惑星システム科学グループ)

 

1.人類の常識は地球の非常識?(過去の環境変動から学ぶこと)
私達人間は、自分の体験に照らし合わせて“常識”を作り上げます。また、自分たちに都合の悪い事実は、見ようとしない傾向があります。限られた体験のみに立脚する“常識”を、より大きな枠組みの中で捉え直し、それが例え不都合な事実であっても客観的に示す。現在顕在化しつつある地球環境問題に対して、古環境学者は、そういう役割を担っていると思っています。
幾つか具体例を上げましょう。下の図1は、グリーンランドの氷床コア(氷床を掘削してくりぬいた氷の柱の事)に記録された、過去12万年間の気候変動です。氷床とは、元々雪が自重で固まったもので、氷の酸素同位体比は気温を反映します。図から幾つかの特徴を読み取る事が出来ます。先ず気づくのは、1万年前以降(後氷期と呼ばれます)、酸素同位体比がほぼ一定の値を取っている事です。後氷期は、私達人類が文明を花開かせた時代で、私達の自然観や気候観は、この時期に作られたと言って良いでしょう。それに対して、7万年前~2万年前にかけての時期(最終氷期と呼ばれます)には、氷の酸素同位体比は数百年~数千年の間隔で振幅の大きな変動を繰り返しています。振幅は、温度に換算すると10度以上に達します。この変動は、発見者にちなんでDansgaard-Oeschger Cycle [DOC]と呼ばれています。DOCの発見が人々を驚かせたのは、振幅の大きさもさることながら、その急激さでした。特に寒冷な(同位体比が小さい)状態から温暖な(同位体比が大きい)状態への変化は、僅か数年という短さだったのです。もう一度図を見て下さい。過去12万年の記録を通じて、千年以上に渡って気候が安定していた時期は、実は後氷期だけです。人類が当たり前のように享受してきた後氷期の安定した気候は、むしろ例外的というべきだったのです。

図1.グリーンランド氷床コアに刻まれた、過去12万年間の気候変動の記録。2~7万年前の最終氷期には、急激な気温変動(ダンスガードーオシュガー・サイクルと呼ばれる)が20回近く繰り返しました。(図はGRIP Members, 1993に基づく)

もう一つの例も、氷床コアに残された記録に基づきます。図2は、南極の氷床コアの氷に閉じ込められた気泡中に残された、過去80万年間に渡る大気二酸化炭素濃度変動の記録です。図には、氷床の水素同位体比の変動も比較のため示してあります。氷床の水素同位体比の変動は気温の指標として使われ、ミランコビッチ・サイクル(地球軌道要素の準周期的変動に起因する日射量の季節分布および緯度分布の変動)に駆動された氷期―間氷期サイクルを反映しています。図から明らかなように、大気中の二酸化炭素濃度は、氷期―間氷期サイクルを反映した気温の変化と並行しておよそ100ppmの振幅で変動しています。実際、大気中の二酸化炭素濃度の変化は、数々のフィードバック過程を通じて氷期―間氷期の気温変化の大部分を説明できると言われています。図2はまた、産業革命後の大気中二酸化炭素濃度の上昇も示しています。現在の大気中の二酸化炭素濃度レベルは380ppmを超え、産業革命以降の二酸化炭素濃度の上昇幅は、既に氷期―間氷期の変化幅を凌いでいます。しかも、氷期から間氷期にかけての100ppmの上昇には、5,000年以上を要したのに対して、人間活動に起因した二酸化炭素濃度の上昇は、僅か200年で起こっています。映画「不都合な真実」でも有名になった図ですが、この様に、長期間に渡る自然の変動の枠の中に人為起源の変化を位置づけることによって初めて、人間活動がもたらした変化の大きさ、速さを客観的に捉える事が出来るのです。

図2.南極の氷床コアに記録された過去65万年間の大気中CO2濃度変動。人間活動による大気CO2濃度増加幅は、氷期―間氷期サイクルに伴う変動幅を凌いでいます。

人類はまた、大規模な自然改変によって、自然災害などを含む環境変動に適応しようとしてきました。また、今後、地球温暖化を初めとする人為的な活動に起因する環境問題を解決するあるいは和らげるために、積極的に大規模な自然改変を行う可能性があります。例えばダムや堤防などで川や海の流れを変える、山を削って地形を変える、といった人為的自然改変は、実は、固体地球が何十万年、何百万年もかけて引き起こしたことに、その類似性を見出すことが出来ます。構造運動の変化や、その結果として生じる地形の変化が、気候や環境にどの様な影響を与えたのかを知ることは、こうした人為的自然改変の影響を正しく評価する上で、重要な知見を与えてくれるでしょう。

2.温暖化に伴う気候モードジャンプの可能性(科学研究費基盤研究S:2006-2010)
上にも述べたように、グリーンランドの氷床コア記録は、最終氷期の気候が数百~数千年周期で急激な変動を繰り返したことを明らかにしました。これは、地球の気候が複数のモード間でジャンプを繰り返したことを示唆します。また、ひとつ前の間氷期には、現在のモードを挟んで、それより温暖なモードと寒冷なモードの間で変動した可能性があります(図3)。これは現在の気候が必ずしも絶対安定なものではなく、急激な地球温暖化に応答して気候モードジャンプが起こる可能性があることを示しています。

図3.グリーンランド氷床コアの酸素同位体比に関する時代別のヒストグラム。4つのモードが識別できます。最終氷期には1番目と2番目のモード間でジャンプを繰り返しました。一つ前の間氷期には2~4番目のモードが存在しました。これに対して後氷期は、例外的に3番目のモードで安定しています。

従って、近未来の気候変動に備えるには、今より温暖なモードの状態や、移行過程、速度を知る事が重要なのです。一方、グリーンランドで発見されたDOCは、その後の研究で、全地球規模の変動である事が解ってきました。しかもその中で、アジア・モンスーンが重要な役割を果たしている可能性が高い事が解ってきました(図4)。アジア・モンスーンは、地球規模の大気循環に影響を与えるだけでなく、アジア-北西太平洋域の水循環、更には生物地球化学サイクルにも大きく影響しています。

図4.日本海堆積物に見られる明暗の縞(左)。日本海堆積物の色の明るさ(赤線)とグリーンランド氷床コアの酸素同位体比変動(黒線)の比較(右)。両者の変動パターンは、細部まで良く似ています。日本海堆積物の色の明るさは、有機物含有量に依存し、それは、揚子江の河川流出量変動を通じて夏季モンスーンの強さを反映しています。

そこで、私達の研究グループ(海洋研究開発機構、環境研究所との共同研究)では、以下の2つの目標を設定して、研究を進めています。
i) 東アジア-北西太平洋域を中心にして、アジア・モンスーンの変動と偏西風蛇行モードの変化が、DOCの増幅、伝播にどう拘っていたかの解明
ii) 間氷期に現在より温暖な気候モードが存在したか、間氷期においても氷期と同様なメカニズムでの急激な気候変動が起こりうるかの検証と、間氷期におけるより温暖な気候モードの実態、制御・維持要因の解明

また、これらの目標を達成するために、私達は、以下のような手法を使っています。
a) 北西太平洋および縁海域の堆積物コアの採取と、それに含まれる有孔虫殻の14Cを測定による堆積物の年代推定
b) 有孔虫殻のd18O, d13C, Mg/Ca比やアルケノン(有機分子)の2重結合数などの測定による表層古水温、古塩分の推定
c) 堆積物中の風成塵の鉱物・化学組成に基づく運搬経路の推定
d) 微化石群衆組成に基づく、表層、深層環境の推定

本研究に関係して、私の指導院生の人たちが様々な研究を行ってきました。以下にその一例を示しましょう。

1) 浮遊性有孔虫殻のMg/Ca比および酸素同位体比に基づいた融氷期以降の東アジア夏季モンスーンの変動(2009年久保田好美さん修論):

東アジア夏季モンスーン強度の変動は、これまでも鍾乳石のd18Oの記録などから復元が試みられてきましたが、変動の規模や時期の地域的差が大きく、広域的変動の様式については知見として確立していませんでした。そこで久保田さんは、その集水域が南中国の広い範囲を占める揚子江の河川流出量が夏季モンスーン強度を反映すること、揚子江の夏の河川流出量が東シナ海北部の表層水温、表層塩分と強い相関をもつことに着目し、東シナ海北部から得られたコアについて浮遊性有孔虫殻の酸素同位体比とMg/Ca比を測定することにより、退氷期(1.9万年前)以降の表層古水温、古塩分を高時間解像度で復元しました。そして、後氷期の表層古水温、古塩分が、1000~2000年の周期、最大4℃、5permilの振幅で変動することを示しました。更に、東アジア夏季モンスーン強度の低下を示す高水温、高塩分イベントが、北大西洋の寒冷イベントとよく一致することを明らかにしました(図5)。これは、後氷期においても北大西洋高緯度域の気候と東アジア・夏季モンスーンが連動していたことを意味します。また、東アジア夏季モンスーン強度低下が黒潮の弱化イベントとも同調していることも明らかにしました。これは、ENSOを支配する西赤道太平洋暖水塊の挙動とアジア・モンスーンのリンケージを示唆する事実として重要です。この結果は、Kubota, Kimoto, Tada, et al.として投稿準備中です。

図5(a),(b) 2つの異なる方法で復元した東シナ海表層塩分変動(本研究)、(c)鍾乳石の同位体比差に基づく夏季モンスーン強度変動、(d)黒潮の強度変動、(e)北大西洋のIRDイベント。灰色線は、夏季モンスーン弱化イベントを示します。Kubota et al. (投稿準備中)

これ以外にも、以下のような研究がおこなわれてきました。
2) ベーリング海西北部中層水深での急激な海洋循環変動(2009年レラ・シュテファン君博論)
3) 水月湖堆積物に基づく最終氷期以降の環境変動(2009年堀内大嗣君修論)
4) 日本海における過去16万年間の生物源炭酸カルシウムフラックス及びCCD変動(2009年西沢槇人君修論)
5) 急激なアジア・モンスーン変動に伴う偏西風の南北震動(JAMSTEC長島佳菜研究員(2006年博士取得)との共同研究)

3.ヒマラヤ-チベットの隆起がアジアの気候を変えた?(中国西方砂漠調査プロジェクト)
そもそも、アジア・モンスーン変動は、いつ、どの様にして生み出され、どの様に変化して今日に至ったのでしょうか?アジア・モンスーンの成立、強化やそれに伴うアジア内陸部中緯度域の乾燥化が、ヒマラヤ-チベットの隆起により引き起こされたとする仮説は、気候モデルによるシミュレーション結果をもとに1970年代から提唱されていましたが、アジア・モンスーンの進化史やヒマラヤ-チベットの隆起史に関する知見が十分でなかったため、仮説が提唱されてから30年以上たった今もこの仮説は十分に検証できていません。仮説を検証するには、シミュレーションにより予測されたチベット(現在の古気候モデルは、まだヒマラヤ山脈を表現できるほど、解像度が高くありません)隆起に伴う気候分布や海洋環境の変化が古気候記録にも見られるか、それがチベット隆起のタイミングと合っているかを調べるのが最も有効です。そして、隆起に伴う気候分布の変化を押さえる上で幾つか鍵になる地域があります。その一つがタクラマカン砂漠を始めとする中国西方砂漠なのです。
通常、砂漠は、30度前後の緯度に分布する亜熱帯高圧帯の下に発達しますが、チベットの隆起と共にその地形による水蒸気遮断効果が強まり、その北側にあたる北緯40度辺りに砂漠の分布が移動することが気候モデルにより予想されています。実際、気象研究所の鬼頭さんのシミュレーション結果では、チベットが現在の60%位まで隆起すると、タクラマカン砂漠やゴビ砂漠が形成され始めます。一方、最近の研究から、チベットは時代と共に北側に向かって成長し、崑崙山脈で構成される北部チベットは、中新世以降に隆起したことが分かって来ました。つまり、タクラマカン砂漠がいつ形成されたのか、それが崑崙山脈の隆起とどう関係したのかがわかれば、ヒマラヤ-チベットの隆起とアジアにおける気候変化の関係解明が大きく進むのです。
崑崙山脈北麓には、崑崙山脈を横切って北に流れる河川が形成した扇状地堆積物が幅100km以上に渡って発達しています(図6)。更にその下には、崑崙山脈が出来る前にタリム盆地の南縁を流れていた河川の堆積物が厚く発達しています。そして、それらの堆積物は、崑崙山脈が隆起する際に、その南縁がめくれ上がり、崑崙山脈の北麓に露出しているのです。私の長年の友人である南京大学Zheng教授は、そうした陸成堆積物の中に、黄色シルト層と呼ばれる細粒風成堆積物が介在されていることを2000年に発見しました。そこで、私達のグループは、Zheng博士らと共同で、北部チベットの隆起と、タクラマカン砂漠やゴビ砂漠の形成の関係を調べるプロジェクトを、2006年から開始しました(図7)。

図6.タリム盆地の衛星写真。中央をタクラマカン砂漠が占め、その周囲を、幅100 km以上に渡って扇状地が囲んでいます。
図7.叶城(Yechang)における調査風景。

2006, 2007年には、崑崙山脈西部北麓の叶城(Yecheng)という地域で調査を行いました。そこには約800万年前から180万年前にかけての陸成堆積物が、約7kmに渡って連続的に堆積しています(図8)。

図8.タリム盆地南西部、叶城(Yecheng)南方に露出する陸成堆積物。幅7kmに渡る全露頭の上半部(約3 km分)の写真です。下位に向かって地層の傾きが次第に急になる様子が見て取れます。これは、地層を堆積させつつ地塊が傾動したことを意味します。

私達(2008年修士修了の杉浦なおみさんや博士課程院生の磯崎裕子さん)は、これら一連の陸成堆積物が、傾動しながら堆積し続けたことに注目し、傾動がいつから始まり、その速度が時代と共にどう変わったのかを調べました(図9)。

図9.叶城(Yecheng)地域における(A)地層の傾斜、(B)黄色シルト層堆積速度、(C)礫岩堆積速度の、460万年前から170万年前にかけての時代変化。

その結果、傾動は約400万年前に始まり、380万年前から300万年前に1回目の活動が、約220万年前から170万年前に2回目の活動があったことがわかりました。380万年前は、Artux層と呼ばれる河川成層に礫岩が頻繁に介在され始める時期に相当し、360万年前からは、Xiyu層と呼ばれる礫岩を主体とした扇状地堆積物が堆積し始めます。これは、崑崙山脈がこの時期に急激に隆起し、侵食も著しくなったことを示唆します。上に述べた2つの活動期に礫岩の堆積速度が高くなっていることもこの考えを支持します。一方、黄色ないしはオレンジ色のシルト層の堆積は約460万年前頃から開始し、420万年前から330万年前および190万年前から170万年前にかけて、その堆積速度は極大値をとっています。これは、タリム盆地の乾燥化が420万年前頃までには完了したことを意味します。一方、傾動の開始は400万年前と乾燥化の完了よりわずかに後ですが、調査地点が、崑崙山脈中軸部より40kmほど北に離れていることを考えると、中軸部の隆起は本地域での傾動より早く始まっている可能性が高いと思われます。即ち、崑崙山脈の隆起とタリム盆地の乾燥化は、数十万年の誤差範囲内でほぼ同時と見ることが出来ることが明らかになりました。これは、テクトニクスと気候変動の関係を直接的に示した初めての例として注目されます。
このプロジェクトでは、更に次のようなテーマの研究が、私の指導院生の人達によって行われています。
1) タリム盆地内における細粒砕屑物リサイクル過程と盆地から放出される風成塵の起源(2009年磯崎裕子さん博論見込)
2) タリム盆地起源の風成塵の起源と特徴の変遷(2009年磯崎裕子さん博論見込)

4.生物の絶滅、進化における地球環境変動の役割
地球史を概観すると、生命の進化、絶滅の速度は一様ではなく、特に絶滅は数百万年から数千万年間隔で集中して起こっています(大量絶滅と呼ばれています)。この大量絶滅の原因として、様々な環境変動が考えられていますが、その実態や生物大量絶滅との因果関係、メカニズムなどは、十分解明されていません。その原因として、大量絶滅が起こった地質境界およびその前後の記録が必ずしも完全ではないこと、また地質記録に細かい年代目盛が入っていないため、生物絶滅と環境変動、あるいは異なる種類の環境変動相互の前後関係が編めないこと、などが挙げられます。
遠洋性堆積物は、広域にわたる海洋環境に関する情報を連続的に記録しています。しかし、ジュラ紀以前の海洋地殻は、その上に乗っていた遠洋性堆積物と共に既に地球内部に沈み込んでしまっています。そして、沈み込みを免れたごく一部の遠洋性堆積物も、沈み込み帯での付加過程で断片化されてしまっています。従来の研究は、この様に断片化された付加体中の遠洋性堆積物(主に層状チャートと呼ばれる火打ち石のように硬い珪質岩からなります。図9)を、大陸棚上の浅海堆積物を使って確立した化石帯別に並べることにより作成した模式的岩相層序に基づいて行われており、連続記録とは程遠いものでした。

図9.犬山地域の層状チャート。この堆積リズムが、ミランコビッチ・サイクルを記録しています。

そこで、私達のグループは、特にジュラ紀以前の遠洋性堆積物が断片化されつつも保存されている日本の付加体に注目し、綿密な地質調査に基づいて断片化された記録をつなぎ合わせて完全連続な記録にする作業を続けています。また、そうして連続的に復元された堆積記録について有機物の炭素同位体比を測定し、テチス海の浅海堆積物の記録と対比する作業も行っています。特に二畳紀/三畳紀(P/T)境界は、そこに発達する黒色頁岩がスラストシートのすべり面を構成するために復元が難しく、その詳細は謎に包まれたままでした。博士課程3年の佐久間広展君は、この問題に取り組んで根気よく復元を進め、あと一息で完全連続復元達成という所まで来ています。この復元を通じて、大量絶滅と環境変動との関わりが解明されると期待されます。
私達のグループはまた、こうした遠洋性堆積物(層状チャート)の堆積記録に細かい時間目盛を入れる世界で初めての試みを始めています。現在、博士課程1年の池田昌之君は、その修士論文研究で、層状チャートの堆積リズムの原因究明に取り組みました(犬山地域中部三畳系層状チャートの堆積リズムに見られたミランコビッチ・サイクルと古気候変動:2009年池田昌之君修論)。池田君はまず、断層により断片化された中部三畳系の堆積記録をつなぎ合わせ、1000万年間以上に渡る連続堆積記録を得ました。そして、チャート層とそれに介在される頁岩層の厚さを計700組以上に渡って計測し、その結果に対してWavelet解析とFourier解析という2つの解析法で周期解析を行いました。Wavelet解析は、卓越周期の周期変調や振幅変調を見るのに適しています。一方、Fourier解析は、ある期間の卓越周期を正確に求めるのに適しています。解析の結果、チャートの厚さの変動に見られる周期とその階層構造がミランコビッチ・サイクルのそれに一致し、更に周期変調の特徴も似ていることが明らかになりました。つまり、層状チャートの堆積リズムは、ミランコビッチ・サイクルを反映していたのです。層状チャートの堆積リズムがミランコビッチ・サイクルを反映していることがわかると、堆積記録に細かい時間目盛を入れることが可能になります。チャート+頁岩一組が、1.7~2.1万年の歳差周期を表わし、それが20組前後集まって、40万年の離心率変動周期を作ります。40万年周期の長さは安定しており、堆積記録からの抽出も容易なので、40万年間隔の時間目盛として利用することが可能なのです。池田君は、この性質を利用して、三畳系層状チャートの数値年代層序を確立して、陸域~浅海域の層序と対比することにより、P/T境界以降の環境変動とそのメカニズムの解明を目指しています。