5つの研究グループ

地球惑星科学専攻では、5つの研究グループにわかれて研究・教育を行っています。
ここでは、それぞれのグループの研究分野について紹介します。

学生の声

 爆発的火山噴火の解明を目指して
  久冨 進作 (地震研究所 博士1年)

 

火山はなぜ爆発するのか?
 「火山はなぜ爆発するのか?」これが私の研究テーマです。具体的には、爆発的噴火が生じているときに、火道(マグマだまりと火口をつなぐ管)の中ではどのようなことが起こっているのかを研究しています。私は、爆発的火山噴火をEvaporation wave(沸騰波)などの「発泡に伴う希薄衝撃波現象」に非常に似た現象であるとイメージしています(このようなイメージは私だけではなく多くの人が持っています)。まず、Evaporation waveについて説明しましょう。管の中に水を入れ、100気圧まで加圧し、300℃まで加熱します。100気圧の高圧をかけているので300℃でも沸騰しません。この状態から、上部の栓を突然抜いてみましょう。このとき、水は急激に減圧され、上の方から沸騰が始まって、それが徐々に下のほうへ伝播していきます。そして、水が水蒸気に変わるときには体積が膨大に増えるので、出口のところでは「水蒸気」もしくは「水蒸気と水」のジェットが観測されます。
 では、火山噴火も今、説明してきたEvaporation waveと似た現象であるとイメージしてみましょう。火口が溶岩ドームなどで閉じられていて、その下には、マグマだまりから供給された火山ガスが溶け込んだままのマグマがあるとします。いま、何かの拍子に(例えば、火山性地震による地すべりで)火口の栓が取れたとすると、火口付近から火山ガスの発泡が始まって、それが下のほうへ伝播していくでしょう。ガスの発泡は、膨大な体積膨張を伴うので火口では、「ガスと溶岩」もしくは、途中で溶岩が冷えて固まってしまったときには、「ガスと火山岩」のジェットが観測されることになります。つまり、急激な減圧による火山ガスの発生が、膨大な体積膨張を引き起こして、火山は爆発するとイメージしているわけです。


火山噴火のイメージ



Evaporation wave の図

地球惑星科学はつらい?おもしろい?
 上で説明してきたイメージで火山噴火を考えようとするとき、使う物理は「ジェットエンジン」や「蒸気タービン」などと一緒です(具体的には、管の中で圧縮性流体がどのように流動するかの物理を使います)。そこで、私はそういった分野の勉強もしています。そのような勉強をする中で感じるのは、地球惑星科学は、なんと不幸な境遇にあるのかということです。
 純粋な物理に近い人たちは、最も簡単な条件下(つまり、最も数学的に解きやすい、もしくは実験しやすい条件下)でどのような現象が起こるかだけを考えます。彼らは、その現象を非常にエレガントに記述します。そして研究はそこでおしまい。彼らの興味は、他へ移っていきます。条件を少し変えたらどうなるかといった泥臭い研究は、スマートな彼らの仕事ではないのです。
 実際のエンジンの設計などまさに工学といった人たちにとって、興味の対象は最も工学的価値が高いもののみです。管の形状を例にとると、最も効率よく流体を流せる形状だけが、彼らの興味の対象です。彼らは、その形状の管の中でどのような流動が起こるかを、私からすれば目もくらむような大金を使って大規模実験を行い(彼らの研究は経済的価値が高いので膨大な予算を使うことが許される)、研究します。
 では、火山を研究しようと考えてみましょう。火山噴火は、通常、最も数学的に解きやすい条件では起こってくれません。また、火山の火道は、多種多様な形状をしていて、最も効率よく噴出が行える場合だけを考えればよいとはなりません。つまり、地球惑星科学(この場合は火山学)は、複雑で多種多様な現象を取り扱う必要があります。
 まとめますと、純粋物理の研究者は、彼らのその強靭な頭脳を使い、最も単純な条件の場合だけを研究すればよいのです。工学の研究者は、膨大な予算を使い、最も工学的価値の高い場合だけを研究すればよいのです。それに対して、地球惑星科学の研究者は、乏しい予算をやりくりし、貧弱な知能をふりしぼって、複雑で多種多様な自然現象を研究しなくてはいけないのです。あぁ、地球惑星科学は、なんと不幸な学問なのでしょうか。(注:面白くするために誇大表現を使っています)
 しかし、別の観点からみれば、限定された材料から、複雑で多種多様な自然現象を研究するということこそ、地球惑星科学の魅力なのです。単に数学を積み上げていくだけでは複雑な自然現象を捉えることは出来ません。また、大規模な実験をすればよいというものでもありません。時には理論、時には観測、時には実験、時には物理、時には化学・・・・・・。様々な手法・観点もちいてアプローチし、複雑で多種多様な自然の神秘を解き明かす。それこそが地球惑星科学です。あぁ、地球惑星科学はなんと魅力的な学問なのでしょうか。(注:面白くするためにほんの少し誇大表現を使っています)
 これを読んで、地球惑星科学は魅力的だと思えた方は、是非、地球惑星科学専攻へ!!

なぜ火山噴火の研究を始めたか、そしてその後の研究
 まず、なぜ地球惑星科学を勉強しようと考えたかから書きます。私の通っていた大学では教養課程が2年間あり、2年生の真ん中でどの分野に進学するかを決めます。大学に入学した当初、私は自動車関係のエンジニアになろうと、機械工学科への進学を考えていました。そんな私の考えを変えたのは、ロンドンへの旅行です。私としては、少しは英語も出来るだろうと考えていたのですが、街中で話されている英語をまったく聞き取ることが出来ません。使われている単語からして、私が勉強してきた受験英語とは違うのです。私は、少なからずショックを受けました。そのような中、「自然史博物館」というところに行きました。するとどうでしょう、解説テープから聞こえてくる音声がびしびし聞き取れるのです。使われる単語は受験英語で慣れ親しんだものばかりで、かつ、どのような内容かが、事前に解説のボードを読むことで、大体わかっていたからだと思います。私は、自分に言語が戻ってくるのを感じました。同時に自然史博物館で語られている自然はなんて魅力あふれるものなのかと思いました。そして、「将来の就職を考えて機械工学をやるなんて世俗的な考え方だ、自分は学問的魅力あふれる自然科学をやろう」と決めました。進学先には、自然科学という言葉のイメージに最も近かった地球惑星物理学科を選びました。 火山を研究しようと決めたのは地球惑星物理学科を卒業し、大学院に入学してからです。指導教官の先生から進められた交通流モデルの論文を読んでいるとき、渋滞が形成されたり緩和されたりする様子が再現されているのを見ていたら、これは火山だと思いついたのです。私は早速指導教官の先生に報告行きました。

私: 「先生、僕はすごいことを思いつきましたよ。これは火山じゃないかなと・・・」
先生: 「うーん、それは誰でも思うよね。」
私: 「・・・」

 このような会話から私の研究ははじまりました。
私は、交通流モデルを参考に、火道中のマグマの流れをシミュレーションできる手法開発を始めました。液体だけでやっていたうちは、まぁそんなに悪くなかったのですが、気体を入れると、計算がうまくいきません。困った私は、勉強を始めました(本来は勉強してから手法開発に取り組むべきですよね)。勉強する中で知ったのは、私の作ろうとしていた手法は、粒子法と呼ばれる手法に分類されるものだということです。粒子法とは、液体や気体を多くの粒子の集まりと表現する手法のことです。私は、すでに開発されている粒子法計算を参考に自分の手法を作り変え、シミュレーションを行ってみました。すると、最初に紹介したevaporation waveと非常に似た現象が見られました。この結果が出たときは結構感動しましたよ。
 これからは、さらに自分の手法を洗練し、出てきた結果をきちんと解釈して、火山噴火の更なる理解につながるよう、研究を進めていこうと考えています。また、将来的には、実際の観測や発泡実験もやってみたいですね。いろいろなアプローチが許されるのが地球惑星科学の最大の魅力ですから。